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Pixar共同創設者が語る、創造性の高い組織をつくるマネジメント

RolandBerger 編集部
RolandBerger 編集部
/ 東京オフィス

By Neelima Mahajan photos by Chris Crisman

Pixar Animation Studios社(以降Pixar社)の共同創設者であるEd Catmull氏は、創造性を発揮できる経営で同社を牽引してきた。

Walt Disney Animation Studios社、Disneytoon Studiosと、彼のこれまでの経歴を聞けば、彼がこれまでデジタル・アニメーションの創造性と商業的発展のために尽力してきたことが伝わる。そして、アカデミー賞やチューリング賞など、数々の名だたる賞を受賞してきた。

Ed Catmull氏によると、革新的な組織を運営するためには、誠実さ、信頼、そしてリスクを取ることを厭わないことだと言う。今回は、どのようにして創造性の高い職場環境をPixar社で作っていったのか、また数々の作品で成功を収めることができたのかについて、話を聞いた。

Ed Catmull氏
Pixar Animation Studios社の共同創設者であり、Pixar社、Walt Disney Animation Studios社、Disneytoon Studios社の元社長である。また、Industrial Light and Magic社のコンピュータ・グラフィックス部門の元副社長であり、コンピュータ・アニメーションにおける先駆的な業績は、2009年に米国映画芸術科学アカデミーから生涯功労賞を授与された。2014年には著書『Creativity, Inc』を出版。

- Ed Catmullさん、あなたは、Pixar社で多くの人が夢見るような、創造性に満ちた組織を作った。どのようにして創造的な文化を形成していったのでしょうか。

当初、まだ最初の映画制作に入る前の頃で、テクノロジー面においては、非常にクリエイティブだった。なので、芸術的な人材を採用したときに、彼らが対等なパートナーとして参加できるよう、細心の注意を払った。それは、現在でも変わらない。
私は多くの企業を見てきたが、内部の階級構造に注意を払わない、そして何が有効で何が有効でないかについて間違った推測をする企業が多かった。そのため、スタートしたばかりの私にとっては、自分たちの現状を検証し、これまでの思い込みに挑戦することがとても重要だったんだ。

- どのような仕組みや方針で行っているんでしょうか。

弊社の社員はリスクを取りたがる。そこが良いところだが、難しいのは、成果を出そうとすると、失敗しないように保守的になってしまうこと。この問題を解決するために、社内にいくつかの施策を実施した。そのひとつが、「Brain Trust」と呼ばれる会議のルールだ。
ルールのひとつは、立場が上の人は、会議中15分以上話してはいけないというもの。力のある人が話すと、その場の雰囲気を作ってしまう。それに迎合してほしくない。お互いに完全に正直であることが必要だ。もうひとつの要素は、仲間同士として話し合うこと。上司から従業員へ話が下りる形式はとらないよ。

-組織が大きくなると、創造性や革新性が失われることがよくある。Pixar社ではどのようにして、そうならないようにしたのでしょう。

制作の開始では、高品質なものを作りたいという点で全員の気持ちが一致している。そして、ある程度のリスクがあってほしいとも思っている。しかし、料理人になるネズミや、風船と家を使って空を漂う老人など、変わったアイディアであるほど、最初のうちはうまくいかないこともある。だからこそ、皆が良いと思ったアイディアは、何があっても支えなければならない。
それは非常に難しいことかもしれない。しかし、そうすることで、私たちが何か変わったことをしたいと思っていること、そして品質が非常に良くなるように必要なことは何でもするという姿勢を示している。
その結果、普通の会社では考えられないことだが、私がPixar社に在籍していた間、制作に取り組んだ22作品のうち、21作品を完成させることができた。中止となったのは、1作品だけなんだ。

-プロジェクトをまるで自分自身のことであるかのように運営してもらう、ということだね。

そう。私としては、メンバーがオーナーシップを感じていることが、最高の状態だと思っている。問題があれば、私たちは必要以上にメンバーと会話をする。難しい問題を伝えることで、「あなたたちもその問題に関わっているのだ。」というメッセージを伝えることができる。その結果、職員たちは社内だけにとどめておくべき情報を任されているので、オーナーシップを感じられる。Pixar社では、これまで一度も情報漏れを起こしたことがない。

-文化の継承、つまり自分より下の世代に価値観を理解してもらうということは、なぜ重要なのか。また、これを実現するための実際にどんなプロセスをとった?

ある時点で、誰かに手綱を渡す必要がある。私が望んだのは、Pixar社にオーナーシップを感じている人たちに託すことだった。彼らにとっては、会社で起こるすべての問題が、自分の問題だったんだ。彼らは、問題を解決するために協力して働いている。在宅勤務への影響や、ストリーミングの普及に伴うビジネスモデルの変化など。

経営者として求めるのは、新しい問題を解決するためのオーナーシップを持った非常に強力なチームだ。テクノロジーは変化し続けているからね。

-このように環境が目まぐるしく変化する中で、「目先の成功」と「未来の準備」をどのようにして両立させているんでしょうか。

私たちの場合、物語や映画を作るという基本的なビジネスがある。でも、私は、常にリスクを伴う新しいプロジェクトに挑戦すべきだと思っている。すべての作品でリスクの高いプロジェクトを行うということではない。小さなリスクを意識するということ。ストーリーかもしれないし、技術や運営方法かもしれない。

-お話を伺っていると、中止になったのは1作品だけですが、失敗したときには、どのように対処したのでしょうか。

制作側の人にとっては、失敗はもちろん大変なこと。ある作品では、監督を交代したことが何度もある。『レミーのおいしいレストラン』でもそうだった。

ある作品では、別の監督に引き継いで話が変わったこともある。それがPete Docter氏だ。Pete氏は、この映画のアイディアが気に入ったので承諾し、このストーリーをどうやって成立させるかを考えた。しかし、彼はこう言った。「せっかく再開するんだから、もっといいアイディアがあるよ。それは、小さな女の子の頭の中で繰り広げられる映画だ」と言った。

彼がそうしたいのであれば、それが私たちの進むべき方向である、というのが我々の方針だ。だからその時点で制作を中止し、Disney社に電話してその旨を伝えなければならなかったんだ。「私たちはこの制作を止めます」と。Bob氏は、私たちが常に会社にとって正しいことをしようとしていることを知っていたので、「正しいことをしてくれると信じているよ」とだけ言った。そして、Pete氏は『Inside Out』の制作に取り掛かった。

-失敗したときの対処法は「信頼」に尽きるということですね。

信頼とは、その人が常に正しいことをする、と信じることではない。物事がうまくいかないときにも、その人を信じるということだ。実際には、人は常に正しいことをするとは限らない。
「信じているからこそ、あなたと一緒に仕事をし、サポートする。ある部分では、意見が合わないかもしれない。私はあなたを知っているし、あなたの意図も知っている。」 そこに信頼が生まれるのです。

- 創造性への取組とは、ほとんどの場合、厄介だと思われている。創造的な組織では、ある程度コントロールされたカオスが正当化されると思いますか?

創造性は「問題解決」だと思う。人生みたいなものだ。そこにはカオスがあり、そして、カオスにならないようにコントロールしようとする人たちがいる。コントロールしすぎると、長期的には良くない結果に繋がる。また、カオスが多すぎると、何も得られない。

だから問題解決に向けたプロセスには、カオスがあり、秩序もある。そして、その2点の中間があり、そこでバランスをとっていく。その中間というのは、一点ではなく、行ったり来たりしながら、変化や修正、学習を重ね、人々を巻き込んでいく場所である。そして基本的に、それは難しいことなんだ。

-リーダーとして、この非常にクリエイティブな組織での自分の役割をどのように捉えていたのでしょうか。また、どんなときにそれを発揮したのでしょう。

私はいつも会議で、知恵を絞ったり、人に指示を出したりしていない(笑)。むしろ、毎回ランダムにいろんなメンバーと一緒にランチをしているね。それが、私が行ったことの1つ。隔週で、社内からまったく無作為に8人を選んで、何の議題もなく一緒にランチをする。何のアジェンダもなく。
私が学んだのは、誰かが苦情や問題を抱えている場合、たとえ相手が間違っていると思ったりしても、最初からそう言わないこと。いつも待つんだ。相手の話を最後まで聞くことは、とても重要。そうでなければ、メンバーたちから問題や課題が上がってくることがなくなってしまうだろう。

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