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これからの仕事観と戦略コンサル

RolandBerger 編集部
RolandBerger 編集部
/ 東京オフィス

ローランド・ベルガーなど戦略コンサルでキャリアを積み、これまで多数の企業で活躍されてきた足立光さん。実は、ローランド・ベルガー東京オフィス代表の大橋譲が、当社に入社した当時の上司でもあった。戦略コンサルで経験して培われた仕事術や、キャリア観、これからの時代に大切な仕事観について話した、スペシャル対談インタビュー。

 

<PROFILE>
足立光
株式会社ファミリーマート エグゼクティブ・ディレクター、 チーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)
P&Gジャパン株式会社、ローランド・ベルガー、シュワルツコフ ヘンケル株式会社社長・会長、日本マクドナルド株式会社上級執行役員・マーケティング本部長等を経て、 2020年10月より現職。日本マクドナルド時代は、 同社のV字回復の立役者のひとりとして活躍。 株式会社I-neの社外取締役、スマートニュース株式会社や生活協同組合コープさっぽろ等のマーケティング・アドバイザーも兼任。著書に『圧倒的な成果を生み出す「劇薬」の仕事術』など。 オンラインサロン「無双塾」主宰。

大橋譲
ローランド・ベルガー 東京オフィス  代表取締役/シニアパートナー
カリフォルニア大学サンディエゴ校情報工学部卒業。日本ヒューレットパッカード、サピエントを経てローランド・ベルガーに参画。米系戦略コンサルティングファームを経て現職。製造業・ハイテク、石油・化学、IT企業等、幅広いクライアントに対して、成長戦略、海外事業戦略、M&A、マーケティング戦略、業務プロセス改革、コスト削減、IT戦略等のプロジェクト経験を有する。

給料をもらってMBAに通うのと同じ環境

 

大橋:足立さんは、私がローランド・ベルガーに入社した時のメンターだったんです。鍛えていただきましたね。足立さんは、社会人の花形とも言えるP&Gに新卒で入社されて、その後なぜ戦略コンサルへ転職されたんですか?

足立:一言でいうと、経営者になりたいと思っていたからです。とにかく短期間で多くの業界や職種について学びたい、それならMBAに行くしかないかと思っていたのですが、コンサルだったら給料をもらって同じことができるのではと考えたんです。実際に、2、3ヶ月くらいの期間ごとに多くの企業や案件を担当しましたし、マーケティング、営業、サプライチェーンまで職種も幅広く経験しました。

大橋:P&Gは優れたマーケターを輩出する優秀な会社ですから、そんなに苦労もなかったんじゃないですか?

足立:いえいえ、それまでのP&Gでの経験はほとんど使えませんでした。使えたのはプロジェクトマネジメントの力と、英語力くらい。クライアントは、上場企業の部長クラス以上の方々ですから、そう簡単に太刀打ちできません。必死に過去のプロジェクトや本を読んでゼロから勉強し直しました。

大橋:私も、ベルガーに転職してきた当初、こんなに通用しないことがあるのかと愕然としました。評価も低かったですね。そこからいつの間にかコンサル歴も長くなり、今や代表になっているのですから何があるか分かりませんね。

足立:まさかね。大橋さんは、事業会社に行こうと思ったりはしなかったんですか。

大橋:そうですね。何度か考えたりもしたのですが、やはりある程度年齢が上でないと経営陣には入れないような年功序列の企業も多いです。そういう会社を外から変えていこうと決意しました。

足立:なるほど。コンサルも事業会社も、メリット・デメリットどちらもあります。コンサルは本当に短期間で多くのことを学べるし、人脈も格段に広がります。でも、私は自分で最終決裁をして事業のPDCAを回していきたいという思いがあったので、事業会社に移りました。

大橋:確かにコンサルは、事業責任を取ることはほとんどありませんね。だからこそ、真のプロフェッショナルとして価値を出し続けるためには、常にチャレンジングな選択をし続けなければと思っています。

足立:今はベンチャーという選択肢もありますが、起業や経営をしたいと思っているなら、その前にコンサルを経験しておくのもお勧めします。MBAと同じように、そこにはトップクラスのビジネスマンが集まっているわけです。必ず学びになるはずです。

最後は人間力

 

大橋:コンサルで一番学びになったことは何でしたか?

足立:コンサルってロジック詰めだと思っていたのですが、結局人の気持ちを動かさなきゃいけない。日本は特に多くの企業がロジックだけでは動いてないですね。正しいロジカルな提案をするということは大前提で、そこから人を動かす話し方や人間力の方が重要かつ難しいということを学びました。

大橋:最後は人間力。それは事業会社でも役に立っていますか?

足立:そうですね。急に、私のような素性の知れないオッサンが、会社の上の立場で入ってきたら、社員の人たちからすると「あのひと、誰?」となってしまいますよね。そういうときは、とにかく、笑かす。社内のあちこちに足を運び、雑談をしたり、飲みに行ったりして、仕事以外の接点をできるだけ増やして、いろんな人と仲間になっていく。そうして実現した施策が1つ2つ成功すると、もっと信頼してもらえるようになります。

大橋:なるほど。コンサルでも、クライアントと同じ立場に立って仲間だと思ってもらえるかどうかは、プロジェクト成功の一番大きな鍵です。あるプロジェクトで、クライアントの親身になって、こうしないとこんな事が起こりますよ、と言い続けていたのですが、最初はなかなか信頼してもらえていなかった。ただ、その予言が全て現実になっていった時に、ようやく相談が来るようになりました。

足立:そうですね。まずは仲間だと認められないと何も動かない。今は、飲み会がしづらい状況でもありますが、とにかく仕事以外の接点を持つことは本当に大事だと思います。

大橋:よく、論理的思考でガードを固めて、相手に勝ったと勘違いしている人がいますが、その状況はむしろ負けです。ロジックで負かしても意味がないんです。それでも決断できないわけだから、そのために寄り添えるかどうかなんですよね。

 

 信頼と出会いは積み重ね

 

足立:コンサルは、経験を積んでいけばいくほど、クライアントからバイネームで指名されないといけません。「あの人に来てほしい」「あの人になら相談してみたい」と思われるような人って、能力よりも圧倒的に人間としての信頼が必要ですよね。正しいことを言うんだけど冷たいような人に指名はかからない。

大橋:足立さんは、相談ごとを絶対に断らないですよね。私が急に「ちょっと相談したいことがあるんですが、今日空いてませんか」とか無理なお願いをしても、毎回すぐに返信をくれる。そういうところから信頼が積まれていきますよね。

足立:「今日だったら、23時からなら空いてるよ」とかね(笑)。人ってすぐにできない理由を作ってしまうんですが、やろうと思えばいくらでも方法があります。

大橋:あと、足立さんが全く知らない人しかいない会に「今から来れませんか?」とか言ってゲストとして呼んだこともありましたね。

足立:その時は知らない人ばかりで、完全にアウェイだったのに楽しかったです。でもそういう形で知り合って、今も付き合いがある人や、仕事に繋がったりすることもあります。何が起こるか分からない。できるだけ社外のいろんな人と会うようにしています。

大橋:コンサルのいいところは、すべての業界とのお付き合いがあるので、交友関係の幅はとても広いことですよね。同じような業界ばかりでは、視野が狭くなっていってしまう。私もできるだけいろんな方に会うようにしています。

足立:同じような背景の人同士で話していても、新しい知見や発見は少ないですよね。私も、“Get out of your comfort zone”というのは常に心がけています。業界もそうですし、年代も違う人というのも大事ですね。会うだけなら簡単そうに思えますけれど、実はそういう人と会い続けるには、一生懸命努力しないといけないんです。

大橋:足立さんは、本当に交友関係広いですが、何か工夫されてることとかありますか?

足立:ランチでもディナーでも、とにかく毎日のように違う人と食事に行く、と決めています。あとは、主催しているオンラインサロンでも、本当に多種多様な人と出会うことができて私自身も刺激になっています。今は本当にいろんな形のオンラインサロンやコミュニティがありますから、どこに住んでいても人との繋がりを広げることはできると思います。

大橋:そういう繋がりから仕事に発展することもありますし、指名される人になるためには、大切なことですよね。

 

自分の名前で仕事ができるように

 

足立:これからは、企業に属しながら他の企業の仕事もしたり、あるいは複数の企業に所属するような働き方も増えてくると思います。企業の名前ではなく、個人の名前で仕事をする、という比重が増えてくるような時代です。

大橋:どんどん働き方は自由になっていきますね。戦略コンサル業界では、なかなか複業や兼業が許されてこなかったのですが、ローランド・ベルガーとしては少しずつ制度を整えて、社外でもいろんな経験をしてもらいたいと思っています。

足立:そうなんですか。そもそもコンサルのパートナー制度って、個人の名前で仕事をしていくということですから、本来の在り方に立ち戻っているわけですね。

大橋:まさに。将来的には全員を業務委託にしたいくらいに思っています。コンサルタントだけをやっていても付加価値は増えません。たとえば医者をやりながらその経験を生かしてコンサルタントをやるとか、エンジニアをしながらテクノロジーのスペシャリストとしてコンサルティングをするとか。そこから相乗効果が生まれると思っています。

足立:いいですね。会社が許してくれるなら、企業に属していてもどんどん複業していったほうが良いと思っています。個人の名前でも仕事ができるようにするためには、自分自身のマーケティングをするという考え方をしていかなければなりません。目の前の仕事をするのに精一杯になりがちですが、自分の価値をどのように上げていくのか、どう実践してどう発信していくのか、ということも同時に考える必要がある。

大橋:ただ、なんでもかんでも手を出して中途半端になってしまう人もいますよね。やっぱり何か一つ極めるということも、同時に必要だと思っています。「型破り」という言葉も、まず型を覚えてから破るということですから。突き詰めていく中で、個性が出てくる。それがさらに極まった時に、「型破り」でイノベーティブな人として世の中の価値になっていくわけです。

足立:そうですね。当たり前ですが、いろんなところで働いていることが価値なのではなく、いろんなところで“実績を出す”ことが価値なわけです。ずっと同じ会社、同じ業界にい続けると、失敗しない環境になってしまう。そうではなく、毎回違う環境にチャレンジして、実績を出していく。それが信頼に繋がっていきます。

大橋:今って、失敗するのを恐れすぎている人が多いように思います。失敗してもいいんですよ。でもそれが自分自身が正しいと思って突き詰めた結果であれば、糧となって次のチャレンジができるっていうことでもある。

足立:私は、自分自身が常に成長し続けないといけないと思っています。過去の知見で、ある程度できてしまう仕事には、学ぶことが少ないし、自分の成長も見込めない。毎回、今までの自分の力だけでは倒すことのできない、ゲームのラスボスを倒しに行くつもりで仕事をしています。

大橋:コンサルはある意味、プロジェクトごとに毎回違う業界や支援テーマになることがほとんどで、同じ知見では太刀打ちできないことも多い。かといって、コンサルだけを突き詰めても、自分なりの価値は上がっていかない。その両立が必要です。そういうチャレンジを続けていきたい人には最適な環境だと思いますね。

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