ヘルスケア

「細胞・遺伝子治療」市場参入への心得

細胞・遺伝子治療「Cell and Gene Therapies (CGT)」は、患者にみられる症状への治療というよりもむしろ、重篤な疾患を根治するポテンシャルを持つ新しい手法である。

遺伝子治療(ゲノム増強・編集)は、DNAを置換・修復することで、身体の機能を回復したり、機能不全の予防に役立てたりする治療法であり、現在では、血友病、神経変性疾患、筋ジストロフィー、代謝性疾患、眼疾患の患者が対象となっている。
一方、細胞療法は、特別に増殖させた、あるいは適合させたヒト細胞を患者に注入または移植することで、枯渇した組織の代替や治療機能を発揮させる手法であり、火傷、特定の癌、変性疾患、炎症性疾患などの患者が対象となる。

CGT製品の売上は、2021年に18億ユーロ、2026年に279億ユーロに達する見通しである。また、アメリカ食品医薬品局(FDA)の展望によると、2025年以降、FDAは毎年10品目程度のCGT製品を承認する見込みとなっている。現行の5つの治療法では、年間売上高が10億米ドルを超えると予測されている。このような予測を背景に、Fate Therapeutics社やCRISPR Therapeutics社など、複数のCGT新会社の評価額がすでに70億ユーロ超に到達している。

この市場における買収の動きは活発で競争が激しく、資金も巨額だ。例えば、2017年にGilead社は、Kite Pharma社を120億米ドルで買収。買収をした理由は3つあり、1つが「このセグメントが、実質的な成長の可能性を示していること」、2つ目が「CGTが、新しい市場に進出する機会を与えていること」、そして3つ目が「根治療法の可能性が、商業的に非常に魅力的であること」。

それでも、この市場への参入は複雑であるため、いくつかの考慮すべき点がある。そこで私たちは、優先すべき5つのポイントにおいて、下記のようなことを推奨している。

・研究開発: 基盤技術のプラットフォームの完全な制御と継続的な開発を確保すること。
・事業開発・ライセンシング: 買収候補を迅速に評価し、十分な情報を得た上で、意思決定を行うためのチーム編成を行うこと。
・製造: 製造工程全体を管理し、製造工程の端から端まで所有するよう努めること。
・市場アクセス・マーケティング・営業: 迅速な展開を可能にするため、保険者や規制当局と早期に連携し、競合に注意すること。
 ・組織・ガバナンス・企業文化: 成功に必要な強いコミットメントと勝つためにプレーする姿勢が重要。

全体としては、CGT市場に参入する際には、次の3つの考慮事項が重要であると考えている。
①組織全体を横断するエンド・ツー・エンド・サプライチェーンを目指すこと。
②新規に開発された技術をターゲットとすること。
③多くの新しい疾患領域が台頭していることを認識すること。

 
詳細はこちらのSTUDYをご覧ください。※英語版のみとなります。

日本語版サマリー:北脇優子(シニアコンサルタント/ヘルスケアチーム)


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