竹口修
竹口修
プリンシパル / 東京オフィス

製薬業界は、かつて大規模な自社研究開発センターを構え、自社開発型のビジネスモデルで成長を遂げてきた。しかし、高血圧や糖尿病をはじめとした生活習慣病に対する薬の開発が一巡したことを背景に、創薬難易度は上昇し、自社開発のみに頼るビジネスモデルは限界を迎えている。さらに、後発医薬品の普及により、従来のように長期収載品での収益確保が困難になってきている。

そのような状況下で、製薬企業において有望な導入品を見出すことは必須課題となっている。効果的な導入品を探索するためには、どのような指針を持つべきだろうか。この記事では、導入品を探索する際の3つのポイントを提案する。

関連領域や医薬品外への視野の拡張

 
自社の注力領域を中心に導入品探索を行うことは当然だが、それだけでは有望な製品を見落とす可能性がある。とはいえ、全ての領域を網羅することは非現実的であるため、対象スコープとしての関連領域の同定が重要となる。

例えば、オンコロジー領域に注力している企業では、抗がん剤使用に伴う疼痛・嘔気・心血管疾患など関連する合併疾患領域を、どこまで対象スコープとして含めるかの判断が必要と考える。

また、医療機器や治療用アプリ、データを活用したビジネスなど医薬品以外の製品群も対象スコープとして検討すべきだろう。例えば、自社医薬品の処方に繋がる診断機器や患者の服薬・疼痛管理をサポートするアプリなどを導入することで、ペイシェント・ジャーニー上での医師・患者とのタッチポイントを増やしポートフォリオの拡充を図ることが可能だ。

導出企業の課題解決につながる提案

 
導入品により得られる自社のメリットを検討することはもちろんのこと、導出側企業側のメリットも考える必要がある。導出企業の抱える課題を理解し、課題解決につながる提携手段を提示することは、交渉を成功に導く上で欠かせない。

導出側企業の抱える課題は製品のタイプに応じて、大きく3つに分けられる。

1つ目は、特定の地域や領域に対する販売・営業ネットワークが不足しているということ。地域間での販売実績に差がある製品や該当領域への新規参入製品などが該当する。この場合、現地での販売ライセンス獲得やコ・プロモーションでの提携が効果的だろう。

2つ目は、ポートフォリオの最適化だ。各科専門性の高まりに伴って、製薬企業の選択と集中が必要となる中で、長期的成長戦略から外れた非注力領域の製品などが該当する。一方で、当該領域を注力領域としている企業は、対象製品の承継を前提に交渉を進めるべきだろう。

3つ目は、主にバイオベンチャーが対象となるが、研究開発費の資金調達だ。特に、開発初期段階における資金調達は大きな課題である。この場合、開発パイプラインに対する科学的な革新性の検証や、将来の市場性・競争環境の変化を予測する必要がある。また、出資のリスク分散・パイプライン数確保に向けて、ベンチャーキャピタルや他製薬企業との共同出資など投資スキームの検討も必須となる。

スピードを意識した探索サイクルの確立

 
これまで述べてきたことを踏まえ、導入品探索をクイックに短いスパンで繰り返し行うことで、魅力的な製品を確実に捉えるとともに、各領域のトレンドの変化をいち早く把握することが可能になると考える。

自社にとって最適な網羅的、且つ迅速な探索アプローチを確立し、そのサイクルを高速で回す体制の構築が鍵となるだろう。

 
共著:八木慎太郎  シニアコンサルタント / 東京オフィス

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