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Z世代を科学する:RB Profilerを用いたZ世代のビジュアライゼーション

藤後順己
藤後順己
シニアコンサルタント / 東京オフィス

筆者は1996年生まれの25歳。これまで数万人規模の消費者調査に基づく、アパレル・ジュエリーなどを中心とした消費財領域におけるコンサルティングに従事してきた。また、2021年にリリースした調査報告書『新型コロナは日本の生活者に何をもたらしたのか』では、新型コロナウイルスを経て様変わりした生活者の価値観と、消費行動・働き方への影響について調査した。

どのような業界であれ、お客様にモノやコトを売る以上、現在の消費者を精緻に理解することは欠かせない。しかし、年代別に見ると、デジタルの急速な進展、東日本大震災、新型コロナウイルスの流行など、100年に一度とも言えるような出来事を子どものころに経験した現在の10代・20代は、それ以上の世代と大きな価値観の”断絶”がある。それゆえ、彼ら「Z世代」を解像度高く理解できている年長者は少ないように見受けられる。

結果、テレビや雑誌などのメディアは、現在の若者に対してこぞって「苦労なく育ってきた」「熱量や欲求に欠ける」といったイメージを流布しているが、一人のZ世代でもある筆者としては違和感を覚えざるを得ない。

本稿では、このようなZ世代について、価値観の可視化のもとで論じてみたい。

価値観や消費行動が個々人で大きく異なる世代 

 
Z世代とは、1996年~2010年生まれで、2022年現在ではおよそ12歳~26歳に該当する若者の総称である。Z世代と聞いて思い浮かべる典型的なイメージとして、「SNSに一日何時間も費やす」や「Netflixなど月額制のサブスクリプションサービスを多用する」などが挙げられるのではないか。

総務省による調査『情報通信白書(2020年)』によると、10代・20代のInstagramの利用率はそれぞれ69%・68%を誇り、全年代での利用率42%と比べても突出して高い。Instagramに留まらず、TikTokは10代、Twitterは20代に支持されていることを鑑みても、SNSを積極的に利用する年代であるといえる。

しかしながら、このデータの裏を返せば、未だに10代・20代の3割以上はInstagramを利用しておらず、利用する7割弱の中でも、友人や有名人の投稿を見ているだけの人も多数存在するなど、利用度合いは様々である。筆者の周りでも、SNSに一切興味がなかったり、SNSに疲れて使うのを辞めたりした友人は多く、筆者自身も普段はあまりSNSを利用しない。

また、ネット環境が幼少期から当たり前のように存在する年代であるため、皆が同じテレビ番組を見て、同じブームに乗っかっていた時代とは対照的に、自分の興味のあるコンテンツを取捨選択するのも当然となっている。SNSの利用に留まらず、価値観や消費行動が個々人によって大きく異なるというのが、ミレニアル世代(1980年~1995年生まれでZ世代の上の世代)以上との決定的な違いではないか。

Z世代のセグメンテーション

 
では、Z世代はどのように多様な層によって成り立っているか?

ローランド・ベルガーでは約4,000名のZ世代を対象に価値観に関するアンケート調査(2022年2月)を行い、統計的な手法のもと、Z世代のセグメンテーションを実施した。結果、Z世代は大きく6つのセグメントに分けられることが判明した。

なお、弊社では「RB Profiler」と呼ぶ独自のビジュアライゼーション・ツールを開発している。消費者の価値観や、企業・ブランドに対して消費者が思い浮かべるイメージを可視化することで、競合他社や消費者を踏まえたブランドマネジメントをよりわかりやすく直感的に行えるようになっている。    

本稿においてもRB Profilerを用いて、Z世代の価値観を可視化した。以下、6つのセグメントについて解説していく。

1.ソーシャルアクティブ層

TwitterやInstagramなどのSNSを最も使いこなす、Z世代に代表的な層の一つが「ソーシャルアクティブ層」である。Z世代に25%程度存在し、都市部に多いセグメントである。

友人や仲間をとても大事にするほか、流行りのモノやコトに対しても敏感な傾向にあるのは、2〜3日経てばバズる(話題になる)コンテンツが激変するSNS上において、自分自身を表現・発信できるこの層ならではの特徴ではないか。

普段の消費行動としては、Instagramを中心に、ブランドの公式アカウントや、インフルエンサー(※SNS上で影響力の大きい人物。タレントだけでなく一般人も多い)の投稿やライブ配信に影響され、つい購入してしまうことも多い。

ブランドマネジメントにおいてソーシャルアクティブ層を狙う際は、オンライン媒体でいかに接点を設けられるかが鍵となる。

2.自分らしさ追求層

ソーシャルアクティブ層と並んで多い層が「自分らしさ追求層」である。Z世代の中でも20代など比較的年齢層が高く、都市部・地方部を問わず存在する。

最も特徴的なのは、地球環境や倫理感に対しての問題意識が強いことだ。サステナビリティに配慮したブランドを選んだり、オーガニックへの関心度も高かったりする。自然環境だけでなく、世界的な流行となった#MeTooムーブメントに賛同するなど、人権意識も高い。

また、普段の消費時には品質や安心感も重要視するため、「良いものを長く使う」のが得意と言える。このようなサステナビリティに関心の高い層は欧米同様に国内でも増えていくだろうし、本気度も増してくると思われる。この層を取り込むには、環境・人権保護に取り組んでいるように見せかけるグリーンウォッシュな企業・ブランドと思われないよう、より真摯な対応が求められる。

3.保守的リアリスト層

「保守的リアリスト層」はZ世代に約15%存在するセグメントで、昔から認められているモノやサービス、ブランドを好む傾向にある。

たとえば、普及の比較的早かったInstagramやTwitterの利用率は76%・64%と高いが、最近人気のあるTikTokではわずか17%に留まる。前述のソーシャルアクティブ層や自分らしさ追求層の半分以下である。

消費行動では、価格やコストパフォーマンスを最も重要視するが、生まれてほとんど好景気を経験したことのない世代ならではの特徴とも言える。

4.没入ギーク層

自分の好きなことにはとことん熱中するなど、オタク気質のあるZ世代が「没入ギーク層」である。Z世代に約15%存在するが、価値観としては先進的・効率的であることを非常に好む傾向にある。

たとえば、洋服を揃える際には、ユニクロなどを中心とした低価格帯のファッションで済ませることが多い。最新のスマホやガジェットに精通している人、アニメやマンガのオタクなども含まれる。効率性を念頭に置いた購買傾向が多く、この層を刺していくには「購入によるメリット」を端的にわかりやすく伝えることが求められる。

5.好奇心旺盛層

「好奇心旺盛層」はZ世代に5〜10%程度存在するセグメントで、比較的女性に多い傾向にある。斬新であることを好み、楽しくてスリルのあることに真っ先に飛び込むのが大きな特徴。実際に、他の層では約3割弱に留まるTikTokの利用率は55%に及ぶ。

また、好みのファッションスタイルを確立できている人が90%以上を占めるなど、自分の好き嫌いが比較的はっきりしているのもこの層の特徴といえる。ブランドマネジメントとしては、今までにないプロダクトやサービスであることを強調し、斬新さをアピールすることで、彼らの好奇心をいかにくすぐれるかが攻略の鍵となる。

6.フォロワー層

世の中の流行や動きに関して関心が薄いのが「フォロワー層」の特徴である。フォロワー層は、従来では国内消費者の半分を占めていたものの縮小を続けており、Z世代においても10%弱に留まる。この10%の中には価値観が今後定まっていく10代も多く含まれるため、フォロワー層が消失に向かう日は近いと思われる。

消費行動におけるこだわりが少ないのが大きな特徴。実際、男性の44%、女性の32%が好きなファッションスタイルを持ち合わせていない。また、この層の2割弱がLINEを含むSNSを一切使用していないというのも特筆すべき点である。

Z世代を“刺す”には

 
一括りにZ世代といっても、様々な価値観を持った消費者がいるということをご覧いただけただろうか。5~10年後に彼らは国内消費の中核となることを鑑みると、2030年代に生き残っていく上で、Z世代を解像度高く理解することは必要条件である。

Z世代を企業・ブランドとして“刺す”には、このような多様なセグメントのなかで、どの層に焦点を合わせて価値訴求を行っていくか、そして最適な打ち手は何であるのかを今一度明確にしておくことが不可欠ではないか。

今後は、どのようなプレイヤーがZ世代へ効果的にアプローチできているか、具体的な先行事例をもってご紹介したい。

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