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東南アジアにおけるインターネット広告・オンラインマーケティング

下村健一
下村健一
プリンシパル(アジアジャパンデスク) / 東京オフィス

デジタルリープフロッグという言葉がビジネスシーンで使われるようになって既に久しい。スマホの普及やソーシャルメディア、ECの浸透率向上等によって、新興国は先進国が歩んできた進化とは異なる道筋を進んでいる。今回はそのリープフロッグについて、東南アジアの広告・マーケティングの観点で論じたい。

インターネット利用状況

 
まずは基本的なところとして、各国のインターネット利用状況を確認しておく。

図表1は各国人口に占めるインターネットユーザー割合(縦軸)と、インターネットユーザーの平均的な1日あたりインターネット利用時間だ。言い換えれば、インターネット普及の「広さ」と「深さ」を示した散布図である。広さを示す横軸を見ると、欧米諸国等の先進国はインターネットユーザー割合が80%以上と高いが、東南アジア等の新興国では65~80%とやや劣後する。先進国では国全土にネット普及が進んでいる一方、新興国は主要都市以外がまだまだという点が背景だ。

興味深い点はインターネット利用の「深さ」を占める縦軸にある。新興国が中心の東南アジア諸国では、1日の平均のインターネット利用時間がなんと7時間を超える。仕事やプライベート、様々な用途があれど、1日の多くの時間をオンラインで過ごしているということになる。日本を含めた先進諸国はそこまでの利用時間はなく、東南アジアインターネットユーザーのオンライン依存度の深さが窺い知れる。

オンライン広告

 
次にインターネット利用状況とオンライン広告の関係性を見てみる。

図表2の横軸は国民全体のインターネット1日あたり平均利用時間だ。これは、図表1のインターネットユーザー割合(広さ)に、インターネットユーザーの1日あたり平均利用時間(深さ)を乗じたものである(結果、非インターネットユーザーも含めた、その国全体の平均利用時間となる)。縦軸は広告費全体に占めるインターネット広告の割合だ。日本では、2018年にインターネット広告がテレビ広告を上回ったと話題になったが、欧米諸国では既にインターネット広告割合が50%を超える国が多い。

他方、東南アジアを見ると、ほとんどの国でインターネット広告割合が日本よりも低い。例えば、タイのインターネット広告割合はまだ25%程度だ。かたや横軸で示されるインターネット利用が東南アジアでも既に進んでいる点は前述の通りである。この状況を素直に捉えるのであれば、消費者のインターネット普及度に比べて、インターネット広告はまだ充分に展開しきれていないということだ。これら踏まえ、ここから後追いで東南アジアのインターネット広告が加速度的に進んでいくという見方も強い。

ソーシャルメディア/インフルエンサー

 
では、最後にインターネット利用の傾向をもう少し詳細に見ることで、東南アジアで今後どのようなインターネット広告・オンラインマーケティングが隆盛するかを占いたい。

図表3は、各国のソーシャルメディアユーザーの1日あたりのソーシャルメディア平均利用時間(横軸)と、インフルエンサーをフォローしている割合(縦軸)を示している。御覧の通り、東南アジアの多くの国はソーシャルメディアの利用時間が長い。インターネットの中でも、ソーシャルメディアにアクセスする比重が高いというわけだ。ソーシャルメディア依存が強い点を一般的な解釈で捉えると、東南アジアは企業やブランドからのトップダウン広告よりも、個人レベルでのクチコミ等による情報伝達傾向が強いということになる。

その中でも、フィリピン、インドネシア、マレーシアはインフルエンサーフォロー率が高い点も特徴的であり、個人レベルの発信の中でも、より影響力を持ったインフルエンサーがトレンドを生み出している。実際、これらの国々では、インフルエンサーマーケティングによる広告費率が他国よりも高いと弊社では分析している。一方で、インフルエンサーフォロー率が低いタイでは、インフルエンサーよりも無名無数の個人がトレンドを作り出している。FacebookやInstagramといった大規模プラットフォームに加え、Pantip等のローカルサイト上でも、タイ人同士で日々、情報交換が行われているのだ。

このような東南アジアのオンライン依存状況を踏まえると、インターネット広告・オンラインマーケティングのポテンシャルはまだまだ大きい。リープフロッグを続けるローカル消費者を上手く捉えていくためには、各国の個別性も考慮しながら広告・マーケティング戦略を検討していく必要があるだろう。        

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