下村健一
下村健一
プリンシパル(アジアジャパンデスク) / 東京オフィス

人口2.7億人を擁するインドネシアは、経済面においても東南アジアで大きな存在感を放つ。2030年にはASEAN 6の合計GDPのうち4割をインドネシアが占めると見られている。一人あたりGDPで見ても、2030年のインドネシアの値は、2022年のタイのそれを上回る水準に至る。高成長を続ける中、コロナ禍にはインドネシア消費者の購買行動や購買重視点には変化も見られた。

引き続き目が離せないインドネシア市場について、弊社への相談は増えており、中でも小売市場関連は多い。本稿ではこのインドネシア小売市場について、4つの変化を二回に渡って論じたい。

オンライン浸透による構造変化

 
インドネシア小売市場を語るうえで外せないのはオンライン化だろう。インドネシアのEC化率はシンガポールを超える水準にあり、また、オンライン広告費はテレビ含めた全広告費の半分近くを占める(図表1)。

“新しいもの”に対する好奇心が旺盛な国民性もあり、オンラインでのモノの購買、情報収集を抵抗無く取り入れている。いわゆるテックサビーの割合も高く、インドネシアは東南アジアの中でもデジタルスタートアップを多く生み出している国だ。その代表格が配車サービスのGojekとECプラットフォームのTokopediaだろう。

2021年には両社の合併によるGoToが話題となったが、筆者はこの意義を「二つの時間軸のオンラインショッピングプラットフォームの統合」と位置付けている。つまりは、配車と並行してGojekが担っていた日用品の即時・即日デリバリーと、Tokopediaが担う嗜好品の中納期デリバリー(数日~週単位)という二つの異なる時間軸に対応したオンライン購買が一緒になったということだ。

これによってデリバリーを担う車両と運ばれる品物のマッチング効率は格段に上がった。また、一人の消費者から、日用品と嗜好品という異なる購買意思決定メカニズムのデータを得られるようになった。オペレーションの観点、並びに消費者理解の観点、双方でGoToは抜きん出ることとなり、インドネシア小売市場の構造変化をもたらす存在と見なされている。

また、GoToのみならず、新たなスタートアップの動きも活発だ。例えば、2021年創業のAstroはQコマース(即時配達Eコマース)のプレイヤーとして注目を集め、Sequoia Capital等から既に1,000億円以上を調達している。注文から10~20分で商品を届けるというビジネスモデルを確立し、Gojekのオンラインデリバリーを超える即時性で差別化を試みている。

近代的小売の小商圏化

 
オンライン化が進むインドネシア小売市場において、近代的小売のリアル店舗では何が起こっているか。そのひとつは「小商圏化」だ。インドネシアの近代的小売市場では、元々コンビニといった小型店舗で小商圏展開のフォーマットが大きいシェアを持つ傾向にあった。そして、その傾向は高まっており、一方でショッピングセンターやハイパーマーケットといった大型業態のシェアは下がってきている(図表2)。

実際、近年ではLotusやDebenhamsはインドネシア市場からの撤退を余儀なくされている。インドネシア消費者は購買行動において利便性を重視する傾向が高いと言われているが、それが小売業態のシェアにも表れていると言えるだろう。

しかし、その中でも生き残りをかけて新たな取り組みを進める大型フォーマットリテーラーも存在する。日系で言えばAEONは郊外での出店を軸とし、インドアプレイグラウンド等を充実させた“体験型”店舗を強みとしている。このあたりはある意味では大型業態がコンビニやECに伍していくための常套手段とも言える。だが、それだけではない方向性を打ち出すプレイヤーも存在する。その方向性とは、「伝統的小売と創るエコシステム」であり、まさにインドネシア小売市場ならではのトレンドだろう。

(後編に続く)

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