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Take→Make→Wasteシステムから循環型経済へ

RolandBerger 編集部
RolandBerger 編集部
/ 東京オフィス

サステナブルなビジネスモデルは、ビジネス、消費者、環境にどのようなメリットをもたらすのか?

 
産業革命は、世界の多くの地域で生活水準の大幅な向上をもたらす成長のきっかけとなった。しかし、その基盤となった、原料を採取し、製品を製造し、副産物や最終製品を埋立地や焼却炉、世界の水域に廃棄するという“take-make-waste”モデルがもはや持続不可能であることがますます明らかになってきている。

環境破壊を考慮すれば、私たちの経済的成功が致命的な計算の誤りの上に成り立っていることがわかる。英国リーズ大学の研究チームはこのほど、30年以上に渡り、天然資源を過剰に消費することなく住民の基本的ニーズを満たしてきた国は一つもなかったと算出した。

しかし、私たちは別の道を歩むことができる。それは、地球上の資源を枯渇させることなく、豊かな未来へと導く道である。これが、資源を守りながら、私たちの物質的なニーズも満たすようにシフトしていこうという「循環型経済」の考え方である。

線形から循環へ

 
循環型経済は、かつて先進的な新しい考え方であったが、現在では、主流のビジネスの考え方として定着している。

もし、私たちが物を捨てるのをやめたらどうだろう?もし、すべてのものを潜在的な資源として扱い、すべての生産物を何か他のものへの潜在的な供給源として扱ったらどうだろう?もし、システムから無駄なものを排除し、できるだけ長く資源を循環の中で活用し続けることができるように設計できたらどうだろう?

循環型経済のコンセプトは、地球上の資源を利用して持続的にニーズを満たす方法として、これらの根本的な問題を解決するものである。これは、線形的な経済モデルとはまったく異なるものであり、リサイクルのような重要だが独立した対策と混同してはいけない。循環型経済への移行は微調整ではなく、根本的な変化である。資源開発、設計、製造、流通、マーケティング、そして物流というバリューチェーン全体像の把握が求められている。

最も基本的なレベルでは、「3R」モデルがある。これは、廃棄物を減らし(reduce)、製品や資源を再利用、及びリサイクルし、(reuse and recycle)、それをできるだけ長く循環させることによって、経済が環境に与える影響を最小限に抑えるという概念を示している。さらに「R」は簡単に追加することができ、修理(repair)や改修(refurbish)、資源の再生(regenerate)に始まり、よりシンプルな技術を復活させるという考え方にちなんで再活性化(reactivate)、良い習慣を奨励し、良い行動のためのインセンティブを創出することを意味する報酬(reward)などが挙げられる。

欧州委員会は最近、消費者に「修理する権利」を与えることを推進することを発表したが、この動きは米国でも広がっている。オンライン・ポータルサイトではすでに、衣服や電子機器の修理方法について実用的なアドバイスが提供されている。Philipsのような企業は、ハイテク機器の再生サービスを導入している。再生可能資源は、エネルギー消費の観点、また新しいタイプの原材料としての観点からも、ますます重要な役割を果たすことができる。

循環型経済という考え方は、決して新しいものではない。イギリス生まれのアメリカ人経済学者 Kenneth Boulding が1960年代に先駆的にその基礎を築いた。Bouldingは、地球環境の限界とそれに基づく資源制約に従って、経済が機能する必要があることを認識していた。彼は、その代表的な論文「来るべき宇宙船地球号の経済学」の中で、資源をできるだけ長く使い続ける「閉ざされた」経済という考えを紹介した。

その後数十年にわたり、彼の考えは多くの人々を触発し、この概念はさらに発展していった。1990年、環境経済学者のDavid W. PearceとR. Kerry Turnerは、著書“Economics of Natural Resources and the Environment”(粗訳:『天然資源と環境の経済学』)の中で、「すべてのものは他のものへのインプット 」と考え、循環経済という言葉を作り出した。

同じ頃、製品やサービスが環境に与える真の影響をどのように測定するかという疑問が生じた。そこで、ドイツの化学者であり環境研究者でもあるFriedrich Schmidt-Bleekは、製品の真のコストを明らかにするために、1994年にMIPS(Material input per service unit)という概念を提唱した。これは、製品のライフサイクル(ゆりかごから墓場まで)において、材料投入量(MI)をサービス量(S)で割ったものである。

イギリスの単独長距離航海士であるDame Ellen MacArthurが2010年に立ち上げたエレン・マッカーサー財団は、廃棄物と汚染の排除、製品・素材の循環、自然再生の3つを柱とする循環型経済モデルを構築している。MacArthurは、2005年に世界一周航海を単独で成し遂げながら、経済システムのもろさについて考えていた。

71日間、彼女は自分の船にある物資だけでやりくりした。「私の人生の中で、有限という言葉をこれほどまでに理解させてくれた経験はありませんでした。」と、後に彼女は当時のことを回想しながら述べた。現在、同財団は循環型経済の発展・普及を目的に、産官学のオピニオンリーダーや意思決定者と密接に連携している。

循環型経済は、技術的な進歩やデジタル化、システム的な理解や財政的な支援、そして取締役会を超えたステークホルダーの意識と変革への意欲の高まりによって、線形的なモデルの行き詰まりから抜け出すための行動計画を提供する高度なフレームワークに発展してきた。チャンスは、私たちが掴むべきものなのだ。

大きなチャンス

 
循環型経済には、環境面での大きなメリットはもちろん、数十億米ドルのビジネスチャンスがある。あらゆる分野の先見性のある企業は、すでにその可能性に目を向けている。しかし、学ぶこと、適応することを躊躇している企業は、その代償を払うことになるかもしれない。

エレン・マッカーサー財団のCEOであるAndrew Morletが2013年に「循環型経済」という言葉をGoogleで検索したとき、わずか50~100件しかヒットしなかったが、現在では数百万件に達している。Unilever、Ikea、Arup、Hewlett Packard Enterprise、Orangeなどの大企業がこのアイデアを取り入れ、ビジネスに組み込んでいるのである。現在、エレン・マッカーサー財団の関連会社は約220社にのぼる。

政策立案者たちもこの考えを導入し、推進している。中国では、2005年以来、循環型経済モデルが政治的な議論の対象となっている。(*中国に関する詳細は、Think:Act Magazine(英語版のみ)をダウンロードしてご覧ください )

EUは2015年に行動計画を策定し、その後、国連環境計画(UNEP)や 国連工業開発機関(UNIDO)に加わり、2021年に「循環経済及び資源効率性に関するグローバル・アライアンス(GACERE)」を発足した。

循環型経済の動きは、明らかに勢いを増している。「循環型経済は、気候変動、生物多様性の損失、廃棄物、汚染といったグローバルな課題の根本原因に立ち向かうためのパワーとツールを私たちに与えてくれます。これは、サプライチェーンの強度を高め、大きな経済成長の可能性をもたらすと同時に、価値と雇用を創出するために、産業全体を迅速に拡大することができる大きなアイデアなのです。」とMorletは言う。

しかし、消費者はこの動きにどのように適応しているのだろうか。この質問は、まったくもって間違っているかもしれない。なぜなら、人々は直面している環境問題の緊急性に目覚め、地球環境の限界と将来の世代の生存を守る、より環境に優しい製品、サービス、仕事をますます求めるようになっているからである。First Insightが2019年に行った調査によると、米国では、Z世代とミレニアル世代の回答者のほぼ3分の2が、持続可能性に価値を置くことを選んでいる。

ミレニアル世代とZ世代が消費者層に占める割合が増加している現在、企業が行動することの必要性はさらに高まっている。これらの消費者は、企業がサステナビリティを自社の価値提案の一部とすることを求めているだけなのである。

ニューヨークを拠点とするサステナブルデザイナー、学者、起業家のBarent Rothは、「私たちの状況、気候変動の現実を認識しない企業は、変化を選択するのではなく、変化を強いられることになるでしょう。先を見越して対応する企業は、方向性を選べるようになることで利益を得ることができるのです。」 と語っている。(* Barent Rothのインタビュー詳細はThink:Act Magazine(英語版のみ)をダウンロードしてご覧ください )

投資家もその機会を認識し、環境や社会に配慮したビジネスにますます注目するようになってきている。Bloomberg Intelligenceによると、そうした環境・社会・ガバナンス(ESG)資産は2018年に30.6兆米ドルに拡大し、2025年には50兆米ドルを超えると予測されている。2019年にローンチした BlackRock の循環型経済公開株ファンドは、2021年に20億米ドルを突破した。

新興市場に特化した投資運用会社であるCirculate Capitalは、発展途上国のプラスチック廃棄物に着目し、早くから価値と利益をもたらすニッチ分野を特定した。「プラスチック廃棄物には本来、価値があります。回収し、分類し、適切にリサイクルすれば、材料の経済的価値を引き出すことができます。」と、同社のIR・渉外担当副社長であるApril Crowは言及します。Circulate Capitalは、投資家がプラスチック廃棄物問題を解決する手助けをし、気候変動と戦いながら、新しい投資の道を切り開く機会があると信じている。

また、この斬新なアプローチは、多くの産業分野において全く新しい可能性を切り開くものでもある。「経済・環境の可能性を最大限に引き出すことで、レンタル、再販、再加工、修理などの分野における循環型ビジネスモデルは、2030年までに世界のファッション市場の23%を占め、7000億ドルの機会をつかむ可能性があることが調査で明らかになりました。」と Morlet は述べている。

道を切り開く

 
イノベーションを起こすことからはじまり、新しい協業や提携、さらには斬新なビジネスモデルの構築まで、すでに循環型経済に貢献している企業もある。

未来を見据えた企業は、新しい役割を設け、ビジネスを推進し、課題に取り組み、チャンスを掴もうとしている。家具、食品やファッション、化学、コンピュータ、建設業界と広い業界に及んで、先行的な事業者が出てきている。全ての業界に汎用的な手法は存在しないものの、連携と業界を超えた思考が進化の原動力であることも踏まえ、斬新なアプローチのアイデアやインスピレーションを探索することは良い結果をもたらすだろう。

家具に対する消費者の意識に変革が起きている。それはまるで洋服ダンスのファストファッションのようだ。国だけで、廃棄物において家具は、1960年の220万トンから、2018年には1210万トンを占めた。その多くが埋立地行きになっている。IKEAは、間違いなく「ファストファニチャー」と呼ばれる家具のブームを牽引してきた企業の一つである。しかし、同社は現在、2030年までに自社を循環型ビジネスに転換させることを約束している。

この戦略の一環として、同社では9,500の製品を評価し、循環型製品の設計・再生可能またはリサイクル可能な材料の使用・家具のレンタルなどお客様向けの循環型サービスの提供といった目標を掲げている。また、サプライヤーやビジネスパートナー、NGOと協力し、世界中のコミュニティや関係者に働きかけている。IKEAは、多くの接点から関係者を巻き込むことを意識的に選んできた。この動きは、循環型社会の実現には連携が不可欠であることを同社が理解していることを示している。グローバルに展開する数十億ドル規模の企業であっても、一人で歩むことはできないということである。

グリーン投資は上向きに推移しているものの、多くの小規模な革新的企業は、資金調達の実績がないため、従来の調達先では資金調達が困難であると判断している。大企業と提携することで、このようなチャンスをつかむことができるのである。大企業との提携は、この機会を解き放つのに役立つ。Circulate Capitalは、ビジネスや 技術的な専門知識、地域や世界のサプライチェーンの知識を持つPepsiCo、Danone、Chanel、Unilever、Dowなどの企業と、有望な循環型経済のスタートアップ企業との提携を実現する。

インドを拠点とするデジタル廃棄物管理プラットフォームであるRecykalは、バリューチェーン全体におけるマテリアルフローを促進し、このアプローチがどのように機能するかを実証している。Circulate Capitalの出資に加え、Morgan StanleyのIndia Infrastructure fundから2200万ドルを調達した。

デジタル化は、膨大なデータを横断的に追跡することで、循環型経済への移行を後押ししている。これは、資源をバリューチェーンに最適なタイミングで戻すために必要なことである。しかし、ノートパソコンやサーバー、携帯電話などのハードウェアの製造や運用は多くの資源を必要とし、そのようなテクノロジーの寿命はますます短くなってきている。Global E-Waste Statistics Partnershipによると、人類が2019年の電気電子機器廃棄物は5360万トンと、5年間で21%も増加しているという驚異的な数値を記録している。

しかし、私たちは廃棄物を減らすことができ、さらに価値を引き出すことができる。多国籍で情報技術企業、ヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)では、廃棄物の削減と再利用は日常業務である。同社は、サービスとしての製品とSaaSに注力することで、デジタル変革を加速させる持続可能なソリューションの創出を目指している。

HPE Financial ServicesのマネージングディレクターであるPaul Sheeranは、「今やどの企業もIT企業だ。しかし、デジタル化が進むと電子廃棄物も増え、リサイクルされるのはわずか17%です。見て見ぬふりをするわけにはいきません。しかし、私たちやお客様にとってビジネスチャンスもあるのです。」と語る。

HPEが取り組む重要な課題の1つは、過剰供給(オーバープロビジョニング)である。「一般的なデータセンターでは、平均して約25%のITリソースが有用な役割を果たしていません。」とSheeranは述べている。HPEが提供する「as a service」は、顧客が必要なテクノロジーだけを導入することで、電力コストを削減し、簡単にアップグレードできるようにするものである。 HPE は、すでに使われなくなった IT 機器の価値も活用している。「多くの企業が、古いIT資産に秘められた価値に気づいていないことに驚かされます。HPE はその価値を引き出すお手伝いをしています」とSheeranは述べている。

改修品ビジネスは、まさに同社のビジネスにとって重要な要素なのである。2021年度、HPE Technology Renewal Centersでは、300万台以上のITシステムを処理された。これらのシステムの85%以上が再商品化され、現役のサービスに戻された。HPEによると、その改修活動により、703,000MWh相当のエネルギーと194,000トン相当のCO₂を削減したとのことである。

リース等金融機能の提供から、循環型経済におけるIT資産の効率的な管理への転換は一夜にして実現したわけではないが、同社は早くからその機会を認識し、必要な投資を行ってきた。Sheeranは、「循環型社会とサステナビリティが、多くのお客様にとってより重要な課題となっていることに、大きな励ましを感じています。まだやるべきことは山ほどありますが、私たちはこの会話を先頭に立って進めているのだと感じていきたいと思っています。」と語る。

成功を測定する

 
循環型経済が強固な枠組みに発展しつつある。しかし、成功をどのように定義し、測定すればよいのだろうか。

例えば、使い捨てプラスチックの使用量を減らすなど、サステナビリティを実現するために必要なステップはいくつかある。しかし、次にどのようなステップを踏めばよいかを考えるのは、なかなか難しいものである。紙製の包装は、プラスチック製や無包装よりも常に優れているのか?部品の回収や機械の改修にかかる環境コストは?古くて効率の悪い技術をできるだけ長く使うことに意味があるのか?誰もグリーンウォッシュと非難されたくないので、科学的根拠に基づく解決策が必要である。それには、行った変更が本当に環境にプラスの影響を与えるかどうかを測定する方法を見つけることが必要である。

例えば、eBay社の英国における自動車部品リユース事業に関する最近の調査では、製品とプラスチックの再利用、資源保全、エネルギー使用量と二酸化炭素排出量の削減において、肯定的な結果が示されている。しかし、使用する計算が狭すぎると、役に立たない答えが出ることがある。収集、選別、製造など、すべてのプロセス段階を考慮した場合、純粋に炭素の観点から見ると、プラスチックリサイクルはバージン化石燃料の使用よりも多くの排出を生む可能性がある。しかし、それは明らかに、増え続ける需要を満たすために再生不可能な資源をさらに採掘するコストを考慮していない。

製品やサービスが環境に与える影響や循環的な発展を測定するための確実な方法の模索が続けられている。その最初の方法のひとつが、環境科学者の故Friedrich Schmidt-Bleekが開発した「リュックサック」のコンセプトである。これは、製品の市場価格に相当する環境価値を提供するという考えに基づいている。Schmidt-Bleekは、これを「製品寿命における、“ゆりかごから墓場”までの材料投入量(MI)÷ 製品寿命におけるサービス(S)」という考え方に発展させ、MIPSとした。

現在では、さらに多くのツールがあります。例えば、エレン・マッカーサー財団(EMF)が開発したCirculyticsは、「企業が事業全体でどの程度循環型社会を実現しているか、また事業、環境、社会のためにさらなる利益を引き出せるかを明らかにする無料の企業レベルの測定ツール」だと、EMFの代表アンドリュー・モレは述べている。

インパクトや成功を測定することは不可欠であるが、単一の企業や産業が単独で循環型社会を実現することはできないことも理解する必要がある。必要なのは業界を超えたコラボレーションやパートナーシップだけではない。業界を超えた規制、インフラ、標準も必要なのである。バリューチェーン上のすべての関係者が共に協力する必要がある。

企業は、より良い解決策を考案するために、材料レベルの専門家と製品レベルの専門家を集めなければならないが、他のステークホルダーとの協力も必要である。例えばプラスチックについては、本当に成功するためには、ポリマーメーカー、パッケージメーカー、ブランド、小売業者、そして回収・分別・リサイクルのインフラを担当する人たちが一丸となって取り組むことが必要である。

企業は、この複雑なネットワークにおける担い手のひとつに過ぎないかもしれないが、その役割は極めて重要である。「社会や環境にも有益な価値を創造し、提供し、獲得する新しい循環型の方法を見つけるには、規模に関係なく、すべての企業の役割が不可欠です。Take-Make-Wasteの経済から、廃棄物をなくし、製品や素材を循環させ、自然を再生させる経済への転換は大きなチャレンジです。廃棄物が作られる前に防ぐために上流に焦点を当て、製品やサービスだけでなく、それらを取り巻くシステム全体のリデザインに集中することが極めて重要です。」とMorletは述べている。

循環型経済の概念はまだ不明確で、その導入において確かな課題があるかもしれないが、同時に環境とビジネスの状況を一変することができることを我々は既に理解しているだろう。

 

「Think:Act Magazine issue no. 37:Circular Economy」(英語版のみ)はこちらからダウンロードいただけます。

 

※本記事は、英語版‘THINK:ACT MAGAZINE “CIRCULAR ECONOMY”From take-make-waste to the circular economy model’の抄訳をもとに掲載しています
by Janet Anderson
Illustrations by Javi Aznarez
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