モビリティ・自動車

EVは環境・経済・産業に「優しい」のか

パートナー/東京オフィス

日本政府は、2030年に新車販売の20-30%をEV/PHEV、2050年に90%を掲げており、今後30年かけて、EV向け追加電力供給と従来車向けガソリン供給を両立するという難しい問題を抱えることになる。

日本の現・乗用車保有台数約6,000万台が、仮に全てEVになる場合、テスラSの春/秋の電費200wh/kmと国交省の乗用車平均走行距離32km/台・日(自家用)を前提とすると、年間約1,500億kwhの追加電力が必要となる。

これは日本の現・電力消費量8,850億kwh/年の16%に相当するが、この規模の電力量を安く・エコに・安定的に発電する方法がない。CO2排出のない原子力発電の可能性が低い中、発電量が変動しコストが高い新エネでの実現は難しく、天然ガスは日本にないため輸入コストがかかる。

現在、自動車に利用されるガソリンは、石油の油種別消費分野の約2割。それがEV普及で不要になってゆくが、石油製品は連産品であり、ガソリンだけの減産は難しい。一方、これまで内需用に設備投資・法規制を整備してきたため、輸出に必要な競争力は育っていない。

急激なEVの普及は電力と石油・化学製品の需給バランスを崩すことになり、両産業を厳しい局面に追い込むことになる。

EV普及に伴い、エネルギー特性を活かしたエネルギーミックス、自動車、石油・化学、電力を俯瞰する産業政策、日本のエネルギーセキュリティ確保など、多角的視点を持つことが肝要である。


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