消費財・小売

数値で見るアパレル業界のグローバル化

ローランドベルガー

福田 稔

国内のアパレルマーケットは約9兆円で横ばい~減少基調にある。但し、この中には年々伸びるインバウンド需要が約3,000億円含まれており、日本人による岩盤のアパレル市場は減少傾向にある。

減少の最大の要因は、ファストファッション普及による衣料品単価下落に伴う、世帯当たりのファッション消費の減少にある。今後は、これに加えて高齢化と人口・世帯減少が加わってくるので、国内市場の未来は明るいとは言い難い。

一方、グローバルをみると、アパレル産業は依然として成長産業に属する。弊社の最新の予測では、グローバルのアパレル市場は実質ベースで2025年までに年平均成長率3.6%、インフレを加味した名目ベースは7.6%であり、2015年に約140兆円だった市場は、2025年に約290兆円(名目ベース)にまで成長する。

特に、伸びが大きい市場は中東・アフリカや東欧で、続いてアジアとなる。

2010年から2015年まで5年間の成長率が名目ベースで4.4%であったことを加味すると、市場の成長スピードは加速化していることになる。この背景には、富裕層の拡大、人口の増加、新興国における中間層拡大、グローバルSPAによるファッションの浸透などがある。

成長し続けるグローバル市場において、一際存在感の大きい市場がアメリカと中国である。

市場規模はアメリカが約32兆円、中国が約28兆円となっており、両国をあわせると世界市場の約40%を占める計算となる。また、今後の成長率予測も2021年まで北米が約2%、中国が約4%と、大きいだけでなく成長余地も残っている市場だ。

このようにグローバルでみるとアパレル市場には未だ成長の余地があり、実際にグローバル展開に成功している企業はその恩恵にあずかっている。例えば、ユニクロでも海外売上が国内売上を上待るのは時間の問題という段階にまで来た。良品計画では、中国事業における化粧品の収益が大きく利益貢献している。

2020年の東京オリンピック前後までは、国内市場もまだ底堅い。しかしながら、団塊世代がすべて75歳以上になる2024年には潮目が変わる。国内アパレル企業が中長期的に生き残るためには、現在は海外に挑戦する最後のタイミングかもしれない。


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