消費財・小売

ファッション業界における「グローカル」

ローランドベルガー

福田 稔

グローバルSPAと言われるInditex、ファーストリテイリング等の成長や、LVMHルイ・ヴィトン・モエ・ヘネシーのようなラグジュアリーグループの出現に伴い、ファッション産業のグローバリゼーションは加速化している。

一方、弊社の調査によればグローバルSPAが一国の市場で占めるシェアの合計値は、15~20%で頭打ちとなることが多く、これにラグジュアリーを加えると、グローバルプレーヤーによるシェアは3割程度で留まる事が多い。

なぜかというと、ファッション市場は本質的にフラグメント(多くのプレイヤーにより市場が構成されていること)であり、そこには中小のローカルプレーヤーが存在できる余地があるからである。ファッション市場は、宗教、人種、民族、気候、文化などの違いに大きな影響を受ける。人種が違えば似合う衣服も異なるし、同じ人種でも文化や気候の違いによって好まれるテイストは異なる。だから、その国固有の文脈を持つローカルブランドが生まれる。

例えば、ZARAやH&Mでもアメリカ市場の攻略には苦労した。ユニクロもようやく北米の黒字転換が見えてきたところだ。グローバルSPAのトップの力を持ってしても、手こずるローカル市場は存在する。

従って、新市場に出る際には入念なマーケットリサーチを行い、対象国にあった参入方法を練ることが大事となる。ターゲットとなる消費者セグメントの特定、コンペティターの設定、プライスポイントの設定、コミュニケーション戦略の策定など検討項目は多岐に渡る。

弊社のような外資系コンサルティング会社はそのようなサポートを生業としているが、残念ながら日本のアパレル企業は、このようなリサーチを中途半端に自前で行うか、とりあえず出店してから様子を見ようと進出し、失敗するケースが後を絶たない。M&Aにより海外進出する場合も、ビジネスDDを行わず、財務DDと経営者の直感のみで買収を決めて失敗するケースが多い。(ちなみにこのようなことは他業界では少なく、アパレル特有である)

一方、横ばいの日本市場で成長を遂げている外資系の多くが、日本のマーケットを徹底的にリサーチして参入し成果をあげている。

ファッション市場はグローカルであり、日本市場は特にガラパゴスである。このような市場に慣れ親しんだプレーヤーがグローバルに出るときは、グローバルのやり方を踏襲すべきではないか。


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