過去15年間の世帯別アパレル消費の変化を比較すると、日本の特異性が際立つ。具体的には、世帯別アパレル消費の年平均成長率が中国+8.7%、イギリス+1.2%、アメリカ+0.7%、ドイツ+0.2%に対し、日本は-1.9%である。
この背景として、よくファッストファッションによる単価の下落が指摘されるが、それだけでは前述の差は説明できない。どの国でも同様にファッストファッションは浸透してきたからだ。それでは、背景にある理由は何か。答えは①日本固有の巨大なトレンド市場の縮小と、②社会全体の高齢化がある。
アパレル市場を、価格帯別に大きく、ラグジュアリー、トレンド、マスの三つのマーケットに分けると、日本は海外と比較して、中間のトレンド市場が非常に大きい。背景には、弊社がフォロアー層と呼んでいる自らの価値観が希薄でトレンドに流されやすい中間層が存在していることにある。
日本のファッションビジネスは、フォロアー層に対するマーケティングで成り立ってきたと言っても過言ではなく、その中身は百貨店、SCといったフォロアー層が集まる館に対する出店と、雑誌・メディアと一体となったトレンドのプロモーションであった。
しかしながら、価値観の多様化や所得の二極化に伴い、現在このフォロアー層に分裂が生じている。フォロアー層は様々なグループに分かれ、独自の価値観を持ったセグメントを形成し、異なった消費行動をとり始めており従来の売り方が通用しなくなっている。
フォロアー層は戦後の高度経済成長と人口ピラミッドの偏りが生んだ日本固有の巨大なマーケットであり、アパレルのみならず小売りの多くが頼ってきた市場である。この市場が消費者の変化に伴い大きく変容していること、結果グローバルから見ると特異であった日本の巨大なトレンド市場が崩れ二極化が進んでいることが、平均支出の減少の背景にある。
また、世帯当たりアパレル消費にボディーブローのように効くもう一つの構造変化として、高齢化がある。アパレルの支出と年齢には明確な相関があり、男性も女性も支出額は50歳前後でピークを迎え、70歳を超えると大きく減少する。
そして足元では団塊世代の第1次ベビーブーマー世代が70代に突入している。ご存じの通り、日本は先進国では最も高齢化が進んでおり、社会全体の高齢化に伴うアパレル支出減少も、世帯当たりの支出落ち込みが先進国で最も大きいことの一因だ。