消費財・小売

アパレルにおけるAIの適用可能性

ローランドベルガー

福田 稔

AIはアパレル産業においてどのように活用されていくのだろうか。AIを入力データにより大別すると、画像解析、音声解析、テキスト解析、データ解析の4つに分けられるが、それぞれの現状から見てみよう。

第一に、画像解析である。この分野は、大量の画像を読み込み、カラー、テイストなどの構成要素を分解し、その中から共通の特徴を抽出することで価値を見出す使われ方が研究されている。近年ハードの進化に伴い、急速に技術革新と実務への適用が進んでいる分野だ。現状、実務での使い方は、スティッチフィックスのように膨大なアイテム候補から絞りこむための一次スクリーニグ機能として用いられることが多い。

第二に、音声解析AIである。この分野は、AIスピーカーの普及に伴い、急速に身近となった領域である。音声という入力形式には大きな可能性がある。スマートフォンのタッチパネルがインターネットに接する人、時間を拡大させたように、音声入力デバイスの普及に伴い、文字通り私たちの生活全体が24時間ネットとつながるようにある。今のところ、音声入力で使われる内容は音楽再生やアラームが多いが、いずれECでの利用も増えるだろう。そして、ファッション分野では音声によるスタイリングアシスタントや接客のようなサービスも遠くない将来出てくるだろう。

第三に、テキスト解析である。この分野は、昨今WEB接客やカスタマーサポートなどでのチャットボット普及に伴い、活用が進んでいる。昨年ユニクロも試験運用を開始した。但し、AIを用いたチャットボットに関してはまだ実験的な要素が強い。一方、ルールエンジンによるチャットボットは様々なケースに対応できるレベルに到達しており、サービスとして企業の導入例も増加している。

最後に、データ解析である。データ解析は人間の能力を最も上回る処理能力を実現できている分野であり、アパレルにおいては、需要予測や期中マークダウン管理といったMD業務やHRテックと呼ばれる人事・採用管理領域での活用が期待できる。但し、当該分野においてAIを用いるためには、既存業務においてある程度ITを活用した自動化やデータのデジタル化が進んでいることが前提となるため導入は簡単ではない。

以上のようにみると、アパレルにおいてAIを導入しやすい領域は既存業務のデジタル化度合によらず導入可能で実用化が進んでいる領域であり、チャットボットあたりがその有力候補となる。

 


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