消費財・小売

ロジスティクス4.0による物流の革新

パートナー/東京オフィス

「ロジスティクス4.0」とは、物流の世界において現下進みつつある新たなイノベーションである。IoT、AI、ロボティクスといった次世代テクノロジーの進化と、活用の拡大は、ロジスティクスの根幹を変えようとしている。「省人化」と「標準化」による「物流の装置産業化」が起きつつあるのだ。

「ロジスティクス4.0」の本質は、「脱労働集約」にある。人的リソースに依存しないビジネスに変わろうとしているのだ。その非連続な変化の先にある未来をいち早く創造できれば、次なるGAFAとなることも可能だろう。GAFAを構成する、Google、Apple、Facebook、Amazonの4社は、ITの進化を見据えたビジネスモデルを先んじて構築し、現在の支配的地位を得ることに成功した。ロジスティクスの世界でも、かつてのITの進化に匹敵する変化が生じようとしているのである。

自動運転トラックの実証実験は、世界各地で実施されている。物流ロボットやドローンを目にする機会も増えた。荷主と物流リソースをマッチングするビジネスも大きく成長しようとしている。「脱労働集約」の実現は、遠い未来の出来事ではないのだ。

「ロジスティクス4.0」は、物流会社にとって、今までのビジネスモデルに対する「破壊的脅威」であると同時に、今までにはない飛躍的成長の実現に向けた「創造的革新」の契機ともなるはずだ。物流ビジネスへの参入を企図する荷主やメーカーからすれば、千載一遇の好機といえるだろう。 

翻って、今、物流の世界は、危機的な状況にある。国内最大手の宅配事業者であるヤマト運輸は、過重労働問題の発生以降、消費増税時を除いて27年ぶりとなる値上げを行うとともに、荷受量を抑制する総量規制を開始した。業界第2位の佐川急便、同第3位の日本郵便もこの動きに追随した結果、宅配便の送料はわずか1年の間に10%も上昇したのだ。

実は、値上げをしたのは宅配事業者だけではない。物流量の増加や働き方改革に対応するため、大手物流会社は軒並み値上げを実行した。その結果、足元では、荷物を運びたくても、運んでくれる物流会社を見つけられない状況が生じている。この「物流危機」を解決できなければ、日本経済は機能不全に陥るだろう。

つまるところ、「ロジスティクス4.0」は物流ビジネスに革新的変化をもたらすだけではない。「ロジスティクス4.0」による「脱労働集約」の実現は、日本経済の持続的成長に不可欠といっても過言ではないのである。 

Further Reading : 『ロジスティクス4.0 - 物流の創造的革新』(日経文庫)


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