価値共創ネットワークとは
ローランド・ベルガーは、グローバル全体において「terra numerata(テラヌメラータ)」というプラットフォームを設け、様々な提携企業を擁している。東京オフィスにおいても、日本独自の提携プログラムを持っている。それが、価値共創ネットワークだ。
日本企業を中心に40社以上と連携し、協業仮説に関する議論を各社と行い、その仮説を元にクライアントの課題解決を図り、これまでにない新しいコンサルティングサービスの提供を目指している。既存のコンサルティングサービスの枠にとどまらないサービスの提供ができることは、新たなる社会課題の有効な解決につながることも多く、クライアント・提携企業・弊社のwin-win-winな関係構築に大きく寄与している。
本稿では、ものづくり企業における価値共創の在り方・進め方について紹介する。
時代の変化に伴う経営コンサルティング価値の変容
ビジョン策定・成長戦略・新規事業創出などの戦略テーマにおいては、市場・技術トレンドの収集・読み解きや、顧客業界・ユーザー課題のリサーチ力が重要だ。
10年前は現場のみぞ知る情報も多く、人海戦術による聞き込みやシニアの業界ネットワーク力など、アナログがモノをいう時代だった。情報収集やドアノック・マッチングには工数とノウハウが必要で(これ自体が価値とされていたが)、チームメンバーの力量や経験値によりパフォーマンスの差が生まれやすかった。
一方、デジタル化が進む今日では、現場のみぞ知る情報もありながら、データ化された情報が格段に増えると同時に、情報へのリーチも簡単になり、多量なデータへの迅速なリーチと解析力がモノを言う時代に変化してきている。
たとえば、価値共創ネットワーク参加企業の「アスタミューゼ」は、世界80ヵ国の特許・論文・グラント情報を保有しており、世界の先端技術開発動向を網羅的かつ時系列で把握することができる。この膨大なデータを用いることで、個人の専門性や知見に依存することなく、納得感のある示唆を得ることができる。
このように、コンサルティングファームとして経営視点での洞察力・解釈力などを磨きつつ、データリーチ・解析等は強みを持つ外部との共創を図ることにより、「1∔1=3」の価値を創出することができると考える。肝になるのは、単なる受発注の関係ではなく、「共創」であることだ。
擦り合わせによる価値の相乗効果
前章ではデータ収集・解析にフォーカスしたが、潜在顧客とのデジタル上でのマッチングによる事業仮説検証や、単なる戦略仮説構築に留まらずPoCを進めながら実のあるDX戦略へブラッシュアップするアジャイル型改革推進、など多様な共創テーマが存在し得る。
たとえば、モノづくり企業に向けたオープンイノベーションを支援する「リンカーズ」は、全国の産業コーディネーターや中小企業とのネットワークを持っている。デジタル上でビジネスマッチングを行うことができるため、短期間で広範囲の顧客候補企業に対する仮説検証を行うことで、事業仮説のブラッシュアップを図ることができる。
これらは調査・仮説構築・仮説検証などにフェーズを分けて別モジュールとして進めることも可能であるが、共創型で同時並行的に進めることにより、進捗に応じた柔軟かつ機動的な対応が取れるため、より短期間で高い成果に到達できる。いわゆる、日本製造業が得意な「擦り合わせ力」を発揮できるのだ。
価値共創ネットワークにはテクノロジー企業も多く参加しているが、アナログ的な要素である「擦り合わせ力」も併せ持つ。ローランド・ベルガーと価値共創ネットワーク参加企業間では、常にコミュニケーションを図っており、相互の強みや価値観の相互理解が進んでいるため、目的・成果のために柔軟に対応することができる。
オーダーメイド型の価値提供
価値共創ネットワークの活用は、出来合いのツール・ソリューションを単に選定するようなコンサルティングに留まるのではなく、企業ごとに異なる経営イシューに対して、独自の強みを持つ企業が集い、オーダーメイドで真に必要な価値創出を行うものだ。
イノベーションを定義したシュンペーターによれば、イノベーションの源泉は「新結合」であると言及した。まさに価値共創ネットワークは「知の新結合」を実践・提供するプラットフォームであると考え、常にブラッシュアップを進めている。
様々な技術や特性を持つ企業と共に、テクノロジーの強みとアナログの強みの両方を活かしながら、より複雑で多様になっていく企業の経営課題や社会課題の解決に貢献していきたいと考えている。