人工知能(AI)とビッグデータを活用するデータサイエンスの発展は、あらゆる事業活動を可視化し、ビジネス価値を生んでいる。たとえば、製薬会社では営業・マーケターの活動が医師の処方に与えるインパクトが明らかになってきている。AIを活用した営業マネジメントは、医薬品販売の可能性を広げ、業界のゲームチェンジャーになることが期待される。
AIを活用した営業マネジメントは、マーケティングや営業の効率化における新しい観点を与える。異なる営業チャネルによる個々の医師へのアプローチ効率の把握、営業とのやり取りを基にしたターゲットとする医師の分類、営業担当者の アプローチ頻度や営業チャネルの最適パターンの特定などが可能となる(図1)。
図1:医薬品の営業で重要になる「医師のカスタマージャーニー」
しかし現在、多くの製薬会社は、消費財メーカーなどとは異なり、データ分析を販促活動に結びつけるのに苦戦している。主な要因として、法規制が販売データの生成を妨げていることや、MRの販促活動と医師の処方を結びつけるデータの不足が挙げられる。
もっとも製薬会社は、すでにAI分析のためのデータを多く有し、新たな知見を生み出すことは決して難しくない状況にある。むしろ、実行に移すことがカギとなる。患者の個人情報保護といった配慮すべき観点もあるが、 既存のデータからマーケティング活動(インプット)と販売結果(アウトプット)のパターンをアルゴリズムによって特定できるフェーズに来ている。
AI駆動型の営業マネジメントと実装のための4ステップ
AIを活用したアプローチは、営業とマーケティングの高度化・最適化を先導する。将来的には営業活動の影響予測、ビジネスの舵取りや業績予測にまで役立てられるようになる。製薬会社は、従来の思い込みや直感を基にした判断を、保有データから検証したインサイトへ変えることができる。ローランド・ベルガーでは「仮説駆動型アプローチと4ステップの導入」にて、製薬企業の 営業・マーケティング領域でのAI活用を支援している。
Step 1: 戦略の再構築とそれに基づいたデータベース構築
営業戦略の見直し、競合会社や外部環境の分析、売上予測、ターゲット顧客特定を実施。
以上を踏まえて、販促活動と医師の処方の因果関係を明らかにできるデータベースを設計
Step 2: データ管理
収集したデータを5種類の指標に基づいて評価し (図2)、その中から重要ドライバー候補を抽出、他のデータベースとの突合・整合性を確認する。また、必要に応じて、データ取得範囲の拡大やデータベースの更新も実施
図2:製薬会社が活用できる5種類のデータカテゴリー
Step 3: データ解析
得られたデータとAIを用いて、パターンや変数間での相関を抽出。得られた結果の妥当性の検証とデータからの示唆を抽出
Step 4: AI×データに基づいた販促手法の見直し
得られた結果や示唆をもとに、各販売チャネルの組み合わせや顧客の属性などを加味したシミュレーションを実施し、販促の効果をモデル化。新たなデータを常に取得していくことで、モデルの精度を恒常的に向上 させていく
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