アジア 消費財・小売

東南アジアにおける代替肉/植物肉市場

Plant-based meat

プリンシパル/バンコクオフィス(アジアジャパンデスク)

東南アジアの代替肉/植物肉市場ステージ

 
世界的なSDGs意識の高まりに牽引され、代替肉/植物肉(Plant-based meat)が事業機会として注目されている。食文化や味の好み、宗教観の違い等もあり、その浸透度合いは国・地域による差異が存在するが、その中でも中国と日本は市場規模として抜きんでている(図表1)。

東南アジアはどうかというと、浸透度が高いシンガポール以外についてはまだまだこれからという位置付けだ。市場規模としては、人口の多いインドネシアで3億米ドル程度、マレーシアやタイはまだ1~2億米ドル程度だ。東南アジア食肉市場全体に占める割合も1~3%と浸透度はまだまだ低い。だが、実は食肉市場に占める代替肉/植物肉割合1~3%という値は、欧州各国も同じような水準である。

しかし、注目すべきは欧州各国は現在、代替肉/植物肉市場が年平均成長率10~20%という高水準にある点だ。まさに拡大期に入っていると言えよう。他方、東南アジアに目を戻すと2025年に向けての成長率は毎年6~8%台に留まる。東南アジアの代替肉/植物肉市場はまだまだ黎明期にあると見られている。

東南アジア代替肉/植物肉市場の夜明けは遠いだろうか。筆者はそう遠くないと推察している。筆者が現地で各関連企業と会話していく中では非常にホットなトピックであることを強く感じられるのだ。

ローカルの大手財閥は既に自社での代替肉/植物肉商品は展開しており、関連スタートアップの勢いもある。それらに目をつけて投資機会を積極的に探す外資企業も数多く、良い案件がないかという問い合わせも我々に増えている。市場規模として数値に現れる直前、まさに拡大期に向けての夜明け前といった様相を感じている。

2025年以降は間違いなく市場は伸びるだろう。その時間軸を是とするならば、日系企業にとっても今が東南アジア代替肉/植物肉事業の“仕込み”の時だと考える。

代替肉/植物肉市場のプレイヤー構造

 
次に代替肉/植物肉事業を展開するプレイヤーを見てみる。東南アジアを含めたAPACで展開する主な代替肉/植物肉プレイヤーは、大きくはグローバルFMCG(Fast-Moving-Consumer-Goods)系、ローカル財閥系、独立系の3つに分かれる。

グローバルFMCG系で言えばNestlé傘下のSweet Earth等が代表格だ。元々は10年ほど前に個人経営事業として設立されたが、2017年にNestléに買収され拡大を続けている。大豆ベースの「マインドフル・チキン」は米国を中心に人気を博しているが、APACへの展開も進めている。

UnileverはThe Vegetarian Butcherを有し、グローバルではBurger King等へ代替肉/植物肉を提供している。APACにおいても、外食産業等のB2B向けが中心であり各国の食文化や味付けに合わせたローカライズも積極的に行っている点も強みだ。

ローカル財閥系としては、CP Foodsはコロナ禍の2021年にMeat Zeroブランドを発表し、代替肉/植物肉市場に本格参入を果たした。代替肉/植物肉を用いたソーセージ、ハンバーガー、ガパオ等を120~160円という低価格で展開。1万2千店舗という、タイで圧倒的な流通網のセブンイレブンを活用して売り出している。今後はタイのみならず、他のアジア各国や欧米への投入も計画されており、彼らとしての本気度が伺える。

独立系の代表格は言わずもがなのBeyond MeatとImpossible Foodsだろう。どちらも米国出自の代替肉/植物肉プレイヤーであるが、既に東南アジア市場への進出も果たしている。Impossibleは、シンガポールでフードデリバリープロバイダーであるDeliveroo、及び現地レストランチェーンとのパートナーシップも行う等、差別化できるビジネスモデルを積極的に模索している。また、アジア出自の独立系プレイヤーとしてもOmnifoods等が既に登場している。

日系企業にとっての参入オプション

 
以上のように、現在の東南アジア代替肉/植物肉市場はグローバルFMCG系が欧米マーケットから地理的展開を果たし、既に参入を済ませ事業拡大を進めている。その中で、ローカル財閥系と独立系もそれぞれ自らの流通ネットワークを活かしたり、テクノロジーを差別化要因にしたりなどし、対抗している構図だ。

その中で、日系企業の目線で見た事業機会はどこにあるのか。ひとつのキーは、日々新たなスタートアップが誕生している独立系だろう。有望な代替肉/植物肉スタートアップへの投資によって、来る東南アジア代替肉/植物肉市場の拡大期に備えるというのが最も現実的なオプションだと考えられる。


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