プラスチックのリサイクレート(再生処理材料)のボリューム拡大と魅力的なマージンにより、業界に新たなビジネスチャンスが生まれる
EUの規制強化と新しいリサイクル技術にけん引され、プラスチックのリサイクル率とリサイクレートの質が向上している。これは産業界のプレーヤーにとって多大なチャンスがあることを意味するが、そのためには、素早く行動することが条件である。
プラスチックのリサイクル(Recycling plastic) は、ウイン・ウインの関係にある。このプロセスは、排出量を減らし、廃棄物を削減し、化石燃料への依存度を下げ、私たちの環境を改善するとともに、節減効果とビジネスチャンスをもたらす。では、なぜもっとリサイクルしないのだろうか。
現在、リサイクルされている世界のプラスチック廃棄物は約10%に過ぎない。残りは、埋め立て処分(50%)や焼却処分(20%)されており、捨てられたり戸外で燃やされたりするもの(20%)さえある。このように、リサイクルの拡大には大きな余地が残されている。しかしEUでは、以下の二つの新しい力学によって、リサイクルの拡大を支える機運が高まり始めている。(1) 環境に関する社会的懸念の高まりを受けた規制の強化、および (2) リサイクルにおいてより高い収率を可能にする新技術の開発である。
ローランド・ベルガーは、プラスチックのリサイクレートが「New Gold」になる可能性があると考えている。本レポートでは、リサイクル拡大を支える新しい力学、そして、企業が「New Gold」をめぐるゴールドラッシュを探求する方法を考察する。
何がリサイクル率を抑制しているのか
プラスチックが要因となるCO2換算温室効果ガス(GHG)の排出量は、年間約20億トンとされており、これは世界総排出量のほぼ4%に相当する。EUはプラスチックの生産とその加工において主導的立場にあることから、排出量の9%を占めている。プラスチック廃棄物はもう一つの大きな問題であり、2020年にEUで回収されたプラスチック廃棄物のうち、リサイクルされたのはわずかに約24%であった。
リサイクル目標や回収スキームなどのEU規制は、排出量とプラスチック廃棄物に対する取り組みに役立っている。今日では、プラスチック廃棄物の約70%がサステナビリティの改善を目指すEU規制の対象となっている。これらの規則によって、プラスチック廃棄物の最も一般的なものである包装材のリサイクル率(recycling rate of packaging)が30%に向上した。しかしながら、2018年のEUに定められた目標に到達するには未だ長い道のりがある。EUは、2025年までに50%、2030年までに55%を目指している。
では、何がEUおよび他の地域でのリサイクル率を抑制しているのか。主な課題には、消費者の規律、効果的な回収と返送のスキーム、リサイクルプロセスで大きなロスとなる分別の質などがある。
チャンスを捉える時
より厳しい規制に加えて、これからは新しい技術がこれらの課題に打ち勝つのに役立つだろう。例えば、物体認識やデジタル透かしなどの新しい分別システムは、リサイクレートの収率と質を大幅に改善することができる。プロセスの下流では、高度な機械的・化学的リサイクル技術によって、増大する需要をカバーするのに必要なキャパシティが確保され、より質の高いリサイクレートの製造が可能になる。これらの新技術については、本レポートで詳細に論じられている。
だが、リサイクル率はEU目標によって押し上げられ、新しい技術はまだ途上段階にある中、リサイクルキャパシティの拡大継続は厳しい状況にある。当社の推定では、EUの2030年目標を達成するには、現状のリサイクルキャパシティをほぼ150%拡大しなければならない。この点が、サステナブルなインプット材料としてのプレミアムマージンと相まって、プラスチックのリサイクレートについての市場価値を大幅に高めると期待されている。
本レポートでは、供給原料の確保、新たな利益の源泉の獲得に焦点を合わせ、産業界のさまざまなプレーヤーにとってのチャンスを考察する。一般的にM&A( M&A )によって実行されることが多い拡大戦略を検討するとともに、ビジネスを推進し、市場でのポジションを強化し、マージンを最大化するために必要な戦略的アクションを説明する。
レポート全文(英語版のみ)は、こちらのページより無料ダウンロードいただけます。
日本語版監修:三輪政樹 プリンシパル/ 東京オフィス
※本記事は、英語版‘PLASTIC RECYCLING: EXPLOITING THE NEW GOLD’(By Oliver Herweg and Dragos Popa)の抄訳をもとに掲載しています