消費財・小売

総合商社の次なる一手

パートナー/東京オフィス

総合商社の2016年度決算が出揃い、資源価格低迷を主因とする昨年度の厳しい業績から、業界全体がV字回復を遂げ、盟主三菱商事が業界トップに返り咲いた。一部マスコミは、伊藤忠商事の「一日天下」と揶揄しているものの、そもそも総合商社を「業界」と捉えるべきなのか、単年度業績で一喜一憂すべき経営環境なのか、といった疑問が残る。

総合商社は似たような事業ドメインを有しており、確かに、資源ビジネスやIPP(独立系発電事業者)等のインフラビジネスでは競合関係にある。ただ、意外なほど、多くの事業セグメントでは商社間で競合関係にはなっていない。且つコア事業セグメント・投融資の狙い目も商社間で違いがあり、コングロマリットという共通項こそあれど、事業構造が各社ごとに大きく異なる。

また、資源ビジネスが典型的だが、市況によって利益変動が大きいのも総合商社の特徴だ。たまたま、市況が良ければ好業績になり、これを持って勝ち負けを判断して良いのだろうか。最近、食料関連の大型投資で減損が相次ぎ、社外から批判の声が高まった。それが、今期は、伊藤忠のドール事業が代表例として好業績に反転している。世界人口増加見通しに伴う水・食糧難といったメガトレンドを捉えなければ、これら食料分野への大型投資の評価を見誤る。

2016年度決算では、一部商社で中期経営計画の見直しがなされた。一言でいえば、アクセルよりもブレーキを踏む力を増した格好だ。地政学上のリスクの高まる中でポートフォリオ管理の強化、金融収縮に備えた有利子負債の圧縮を色濃く打ち出し、投融資計画を下方修正している。

ここ10年くらいの商社の常套手段であった「投資(カネ)で利益を買う」動きは弱めざるを得ない。他商社の動きに惑わされず、長期目線で社会・ビジネス環境を俯瞰・構想しながら、コア事業の収益基盤強化・成長に資する「戦略」「発展シナリオ」に基づいた投融資を厳選して行えるか。その成否は、いわゆるインテリジェンス機能とビジネスデベロップメント機能の優劣と連携力に収斂していくのではないかと考える。

図表:2016年度セグメント別純利益[億円] 


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