テクノロジー・通信

音声・対話AIの進化と普及がもたらすもの

ローランドベルガー

福田 稔

今後10年間の消費社会の変化を占う上で、これまでと変わらず重要な因子としてデジタル化があるが、中でも最もインパクトのあるドライバーは音声認識・対話AIの進化と普及である。アマゾンが開発した音声認証インターフェイスのアレクサは、既に家庭用スピーカーのアマゾンエコーに搭載され全米を席巻しているが、アレクサは2つの側面で人々のデジタルライフを革新する。 

 1つめは「音声」を入力インターフェイスとしている点だ。過去スマートフォンがネット人口を爆発的に増やした背景は、タッチパネルという入力インターフェイスがキーボードよりも使いやすく日常生活にフィットしていたからである。その点「音声」はタッチパネルを超える可能性を持っている。高齢者だけでなく殆どの人に優しいし、何よりも“ながら操作”や家電への入力インターフェイスとして相性が良い。アレクサ対応のIOT家電は今後次々と上市され、家庭でのデジタルライフを大きく変えるだろう。

 アレクサの第2の特徴は、「スキル」という機能にある。この機能は名称と指示内容を組み合わせてアレクサを操作する機能であり、アプリのように自由に開発できアレクサに実装できる。アマゾンはアレクサの仕様そしてスキルの開発をオープンプラットフォームとして展開しているため、現在スキルを開発する企業は急増しており、直近1年間で数千のスキルが開発されている。この状況はオープンソースが普及しWEBアプリケーション・サービスの開発が進展した2000年代前半、スマートフォンが普及しスマホアプリ開発が進展した2010年代前半と大変よく似た状況である。今後、アレクサを音声認識インターフェイスとして実装したIOTデバイスは広がり、それと共に様々な「スキル」が開発され、機能として実装されていくだろう。

このように音声入力が当たり前となり対応デバイスが普及すると、いずれは家庭に存在する複数のアレクサ端末を横串で管理できるAIが必要となる。即ち、音声入力を一元化するためのバーチャルな家庭用AIコンシェルジェで、日用品のメンテナンスからファッションをはじめとするエンターテイメントの提案、時には家計の管理まですべて賄ってくれるような存在だ。もしかしたら、私たちが幼いころ想像した“ドラえもん”のような便利な家庭用ロボットは、目に見えない「声」の集合体として我々の前に現れようとしているのかもしれない。まさに時代はアンビエントコンピューティングの幕開けに位置するのである。


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