新型コロナウイルス アパレル・化粧品市場に与える影響と採るべきアクション

2020年4月、東京発-ローランド・ベルガーは、アパレル・化粧品市場に関する最新スタディ「新型コロナウイルス アパレル・化粧品市場に与える影響と採るべきアクション」を発表いたしました。本スタディでは、今回のウイルス感染拡大が、国内アパレル・化粧品市場に与える影響を定量的に試算し、企業活動に対する示唆を抽出しています。

要旨
新型コロナウイルス(COVID-19)によるアパレル・化粧品領域に対する影響は甚大であり、見通しは全くついていない。1年以上の長期化を予測する専門家や第2・第3波のリスクを指摘する研究機関もある。他方、企業経営者は現在の自社の状況とキャッシュポジションを見据えながら、刻々と変わる状況の変化に合わせてスピーディーな意思決定を行うことを求められている。
それでは、COVID-19による2020年通年の市場への影響は、実際どの程度となるのだろうか。
今回、弊社はアパレル・化粧品業界において新型コロナウイルスが国内市場、特に売上高に与えるインパクトを、複数のシナリオで予測し、企業の対応方針について示唆抽出を試みた。

今回想定したシナリオは、大きく下記の3つである
– シナリオA:6月に終息し、夏は一時的に消費が活性化するシナリオ
– シナリオB:8月に終息し、秋は一時的に消費が活発となるシナリオ
– シナリオC:10月に一旦終息するも、消費は年末まで冷え込みそのまま不況となるシナリオ

本スタディの定量化にあたっては、各シナリオにおいて具体的に次の6つのドライバーをプロジェクションモデルの変数に織り込み、精緻化を試みている。(「外出抑制」「インバウンド消費」「所得減少・倹約意識の高まり」「サプライチェーンへの影響」「消費行動のデジタル化」「リベンジ消費意欲」)

各市場規模の2018年実績と2020年の予測値の実額対比は、下記の通り
– シナリオA
 アパレル市場9兆2,240億円(2018)⇒7兆8,000億円~8兆3,000億円(2020)
 スキンケア市場1兆9,090億円(2018)⇒1兆7,000億円~1兆8,000億円(2020)
 メーキャップ市場7,810億円(2018)⇒6,600億円~7,000億円

– シナリオB
 アパレル市場9兆2,240億円(2018)⇒6兆1,000億円~6兆5,000億円(2020)
 スキンケア市場1兆9,090億円(2018)⇒1兆4,000億円~1兆5,000億円(2020)
 メーキャップ市場7,810億円(2018)⇒5,200億円~5,400億円

– シナリオC
 アパレル市場9兆2,240億円(2018)⇒4兆8,000億円~5兆1,000億円(2020)
 スキンケア市場1兆9,090億円(2018)⇒1兆2,000億円~1兆 3,000億円(2020)
 メーキャップ市場7,810億円(2018)⇒4,100億円~4,400億円(2020)

図: シナリオ別の2020年市場規模予測[十億円]

不要不急の商材が多いアパレル市場、メーキャップ市場においては、購買周期が安定しているスキンケア市場と比較すると、新型コロナウイルスによるインパクトが大きい。
また、アパレル市場を価格帯別に、ラグジュアリー・トレンド・マスの3つに分けると、ラグジュアリー市場が最も影響を受けやすく、シナリオCの場合、ラグジュアリー市場はほぼ半減する。シナリオB・Cが現実となった場合は、フラグメントで低収益の企業が多いアパレル業界は大打撃を受け、中長期的に多くの企業が倒産や吸収合併の憂き目にあう可能性が高い。

今回のウイルス感染拡大は、アパレル・化粧品関連企業に対し未曽有の影響をもたらし、市場の構造変化のスピードも加速化する。企業はウイルスが終息するまでの時系列を三段階に分け、論点と企業活動を設計すべきである。すなわち、短期(COVID-19下)、中期(外出自粛解禁直後)、長期(終息~ポストコロナの世界)である。そのうえで、複数のシナリオ、自社に対する定量的なインパクトを準備し、必ずや訪れるポストコロナ後の世界にスムーズに順応すること、ピンチをチャンスに変えることが求められている。

※本スタディのサマリーはこちらよりご覧ください。