2020年5月、東京発-ローランド・ベルガーは、最新スタディ「新型コロナウイルス 移動のあり方はどう変わるか」を発表いたしました。本スタディでは、今回のウイルス感染拡大によって生活者のマインド・行動の変化が、どのように移動の変化に影響するのか、そして企業の戦い方にどう影響するのかを論じています。

弊社は、新型コロナウイルスの影響を包括的に分析したレポートを全5本、無償で公開します。この「移動のあり方はどう変わるか」はその2本目となります。
弊社としては、今回のウイルス感染拡大により多くの日本企業が深刻な打撃を受ける中で、各企業が当面の危機を乗り越えるとともに、前例なき変革の波に柔軟に対応することで更なる成長に繋げられるよう最大限の支援をしたいと考えています。
本レポートが事業の意思決定の一助となり、広く日本社会に貢献できれば幸いです。

要旨
新型コロナウイルス(以下COVID-19)を契機とした外出自粛等の影響により、日本国内全体の人の移動量は大きく減少し、その結果、消費の縮小と企業活動の停滞を引き起こした。
このような自粛生活を通じて、「バーチャルの有用性」「リアルならではの価値」「社会への向き合い方の意識」に変化が生じている。
その結果、Post COVID-19でも生活様式は従来とは異なるモノになるのではないか。例えば、リモートワーク・オンライン授業の浸透、仕事による出張の減少、オンライン消費拡大といったデジタル・バーチャルの活用が進む。また、健康維持・QoL向上を目的とした外出を意識的に行ったり、自分だけの時間・空間を確保する動き、郊外・地方への移住を考えるなど、リアルな場へのニーズの変化。そして、仕事と日常生活の時間の融通が容易化、余暇の取得の増加、社会貢献など、時間の使い方や社会への向き合い方への意識が変化する。

このような生活様式の変化は、移動の仕方にも変化を及ぼす。
Post COVID-19では、「人の移動総量の減少」「移動ピークの平準化」「移動ポートフォリオの多様化」「移動に求められる質の変化」が生じ、具体的には9つの移動の変化が想定される。

① 企業間コミュニケーションのデジタル・リモート化によるビジネス目的の中距離移動の減少
② リモート化の進展による、従来は平日の朝夕集中であった仕事・学業のための移動の減少と分散化
③ 消費行動のオンライン化による買い物・用事での外出の減少
④ 仕事場の多様化や融通の利くスケジュールを背景としたShort Tripを含む日々の近距離移動の増加
⑤ オフィス外からのスポット対応が可能なリモートワークの浸透等による長期休暇による移動の増加
⑥ ソーシャルディスタンス確保への意識の高まり等による混雑地域・混雑期を避ける休暇の増加
⑦ 作業環境や余暇を楽しむ時間・空間としての快適な移動を追求したニーズの増加
⑧ COVID-19を契機とした社会貢献への意識の高まり等による環境負荷に配慮した移動の需要増加
⑨ リモートワークの浸透や、住環境への意識の高まり等による移動総量の郊外・地方へのシフト

その結果、「移動」をビジネスとする企業にとっても戦い方の変化が求められるようになる。
これまでの大量・高頻度輸送を前提としたアセットの持ち方はコスト過大になり、機材・人員等のオペレーション効率を高め、高付加価値な移動体験を提供し収益力を高めることが必要になる。空間に対する意識の高まりを踏まえ、安心・快適な移動空間や心身の健康に資する移動の提供が求められるようになる。
また、地球環境や社会貢献への意識の高まりから、環境負荷に配慮したEV等のサステナブルなモビリティにシフトする。移動に意味を持たせる動きも起こり、単に移動を提供するだけでなく、目的・目的地・タイミングも踏まえた最適な移動のデザインが求められる。スムーズ・シームレスな目的地への移動を実現するには、ユーザー・モビリティ・目的地などが繋がっている(コネクテッド)状態が実現していることが求められる。そして、リアルとバーチャルの垣根は下がり、バーチャルを活用することがリアルの移動を喚起させることにもつながってくる。

このようなトレンドをふまえ、9つの変化が考えられる。
1. 従来のピークに合わせた保有アセットや運行体制を、移動量の減少や平準化の進行に合わせ、結果、MaaSビジネスが加速
2. 大規模大量輸送に代わり、単なる移動手段に留まらない1人1人のスペースを生み出す車内空間による高単価化
3. ソーシャルディスタンスへの意識の高まり・他人とのスペース共用への抵抗感に応えた、個人所有の小型モビリティの提供やシェアリングの不安感を拭う取組み
4. 日常の手軽な近距離移動の増加をふまえ、二輪やキックボードなどのちょっとした移動に便利なモビリティの提供サービスの増加
5. EVや電動二輪など、環境負荷を最小限にするモビリティが増加する
6. 個宅向け物流総量増加を担う、需給マッチングプラットフォーム整備や自動化技術・新しい物流モビリティの登場
7. 地方部を中心に、自動運転・Podの導入、乗合い・多用途化での稼働向上、地域を跨いだ共通化により、低コストな日常の移動を担うサービスの提供
8. 単なる移動ではなく、日々の生活や旅といった移動の目的や目的地と連携し、移動に意味を持たせることで、より価値のある移動を提供する
9. バーチャルにて多様な“目的地”の魅力をユーザーに発信し、1人1人の好みに合った旅(目的地+移動)を提案し、実際の移動に繋げる

これまで人の移動総量と経済成長は一定の相関が見られ、経済成長と共に人の移動総量が増加し、また移動機会の増加が経済成長を作り出したとも言える。しかし、Post COVID-19の世界においては、この前提が覆る可能性があり、「移動」に関するビジネスのあり方に変化が求められる。

※本スタディはこちらよりご覧ください

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