新型コロナウイルス COVID-19により進化するヘルスケアのトレンド

2020年5月、東京発-ローランド・ベルガーは、新型コロナウイルスに関する今月発表した2つのスタディ「生活者の価値観・消費行動・働き方はどう変わるか」及び、「移動のあり方はどう変わるか」に加え、最新スタディ「新型コロナウイルス COVID-19により進化するヘルスケアのトレンド」を発表いたしました。本スタディでは、新型コロナウイルスの出現によって、ヘルスケアを取り巻く従来のトレンドがどのように進化していくのか、現代社会がどのように向き合っていくべきかを論じています。

弊社としては、今回のウイルス感染拡大により多くの日本企業が深刻な打撃を受ける中で、各企業が当面の危機を乗り越えるとともに、前例なき変革の波に柔軟に対応することで更なる成長に繋げられるよう最大限の支援をしたいと考えています。
本レポートが事業の意思決定の一助となり、広く日本社会に貢献できれば幸いです。

要旨
新型コロナウイルス(以下 COVID-19)は、医療業界だけでなく、あらゆる産業においてグローバル規模で未曽有のダメージを与えている。感染拡大終息の目途が付かないなかで、Afterコロナではなく、Withコロナといった考え方も提唱されるようになってきた。気候変動や国を跨いだヒト・モノの移動が目まぐるしい現代社会は、ウイルスの突然変異及び、感染拡大を誘発させる要因を多く抱えており、我々は今後もこのような新型ウイルスとの共存社会を築いていかなければならないだろう。
ウイルスとの共存社会においては、“医療崩壊を防ぐためのリスク分散の構え”及び、“学校や企業など、消費者の所属グループが主体となった健康管理”が重要になってくる。
この2つの考えに基づき、弊社は従来の医療バリューチェーンに生じるトレンドについて以下のようにまとめている。

1.法人が主体となった健康管理・予防プログラムの導入
…従業員が感染症に罹患することによる事業へのマイナスインパクトが顕在化。予防サービスのターゲット顧客が個人から法人単位へシフト
2.POCT(Point of Care Testing)などの迅速診断による患者の早期リスク層別
…従来の遺伝子検査だけでなく、AIなども用いた重症患者の迅速なスクリーニングと、早期介入・個別化医療が進む
3.地域単位での医療機関の役割分担と連携促進
…既存の医療インフラを最大限活用するために、地域内でのプライマリー・急性・長期医療の役割分担が進む
4.慢性疾患領域を中心にオンライン診療が浸透
…重症化させないための予後ケアにおいて、患者バイタルデータを取得するデジタルツールの普及に伴い、オンライン診療が進展
5.ITを活用した患者の予後トレース・モニタリング
…感染症においては、二次感染を予防するための行動履歴管理、慢性疾患においては患者の経過観察を目的に、官民主導で患者データの収集が進む
6.RWD(リアルワールドデータ)を保有するプラットフォーマーの出現
…上記トレンドの進展に伴い、あらゆる場面で患者データが取れるようになり、データプラットフォーマーが多数出現

以上のトレンドの進展は、製薬企業をはじめ、従来のヘルスケア産業のプレイヤーのビジネスに様々な変革をもたらす。特にデジタルヘルスの普及はいよいよ加速されるとみられ、これまでマネタイズが難しかった当該領域において、近々高収益プレイヤーが出現するだろう。
ヘルスケア業界に従事する企業においては、これらのトレンド普及を念頭に、改めてこれからの事業戦略を見直してはどうか。

※本スタディはこちらよりご覧ください