モビリティ・自動車

最新スタディ「グローバル・サプライヤースタディ2016」を発表いたしました

世界の自動車部品市場に関する分析結果をまとめたスタディ「グローバル・サプライヤースタディ2016」 をLAZARD* と共同で発表いたしました。

●自動車部品サプライヤーの2015年の利益率(EBITマージン 金利税引き前利益率)は過去最高水準の7.4%を記録。売上成長率は過去7年で最低水準に低迷

●「革新的なテクノロジー」と従来にない「新しいビジネスモデル」の台頭により自動車部品市場は不確実性を増幅

●電気自動車と自動運転向け部品市場は今後10年間で5倍以上の成長見通し

●柔軟性、スピード、イノベーションの向上が重要な成功要因

自動車部品サプライヤーにとって最大の課題は、2016年における市場縮小の可能性と将来の技術革新に備えることである。

2010年から続いた自動車市場の成長は概ね終わりを告げた。売上成長率は過去7年間で最低レベルとなり、2004年の水準も僅かに下回る製品セグメントもあった。「世界の自動車部品サプライヤーは2015年、過去最高の利益率を達成しました。好業績に支えられる一方、成長鈍化や世界経済の脆弱性増幅、また近い将来には技術革新や新たなモビリティへの対応が必要となるでしょう」、と当社のパートナーであるフェリックス・モギー(Felix Mogge)は指摘する。

世界の自動車生産台数の伸びは限定的

本調査によれば、世界の自動車生産台数は2016年以降、約2%の成長に留まる見通しだ。「自動車部品サプライヤーは、収益安定化や新たな成長に向けた成長分野を特定する必要があります。さらに、短期的には、大きな需要収縮を招く可能性を持つマクロ経済にも備えるべきです」、とLAZARDのディレクターであるクリストフ・ゾンダーマンは指摘する。

世界の自動車主要市場を見渡せば、中国市場では従来の2桁成長が望めない可能性が強く、ブラジルやロシア経済が短期で回復する見込みは非常に薄い。そして、イギリスのEU離脱は欧州に新たな不確実性をもたらしている。

自動車産業は、過去最大の激変に直面

「今の業界変革は、世界の自動車産業が過去最大の激変に直面していることを示唆している」、とゾンダーマン氏は述べている。自動車の利用方法自体を変える革新的テクノロジー、従来存在しなかった新たなビジネスモデルが台頭し、今後10年の事業機会を提供する。一方、「いつ、どこで、チャンスが生まれるか」の先読みが困難なため、大きな不確実性を生み出している。

こうした事業環境下において、自動車部品の市場規模は、2015年の7,000億ユーロから2025年に8,500億ユーロ以上に拡大する。一方、サプライヤー間での利益配分は大幅にシフトすると予想される。

分野別にみると、パワートレイン分野では、E‐モビリティの発展が目覚ましい。現状では技術的課題があるため、エンドユーザーが納得するビジネスモデルの構築には程遠い状況ではあるが、中央・地方政府レベルで進められる排ガス期制強化が、今後数年に触媒的な役割を果たす可能性は高い。

電気自動車の市場は今後10年で、7-10倍に拡大する見通しだ。電動パワートレイン系メーカーの潜在的成長性は非常に高い。従来の内燃機関エンジンは一段とコモディティ化が進む。

運転支援・自動運転向けの部品市場は2025年までに5倍近く拡大し、280億ユーロに達する見込みだ。既存の部品メーカーは巨大テクノロジー企業をはじめとする競合との競争激化に直面することになろう。

パワートレインメーカーは市場低迷と複雑性の増幅に直面

従来型のパワートレインメーカーは複雑性とコストが増大し、利益率は直近で業界平均(7.4%)を下回る6.9%まで低迷した。一方、シャーシメーカーは運転支援・自動運転機能の需要増により利益を増やし、利益率は7.7%、タイヤメーカーに次ぐ高い水準を誇る。

各メーカーの利益率は事業だけでなく、地域にも大きな依存性がある。欧州の部品サプライヤーは先進的テクノロジーにより様々な事業領域で利益を創出する(6.5%(2007年)→8.0%(2015年))一方、中国のサプライヤーは、国内市場の競争激化により減益(8.0%(07年)→7.4%(15年))となっている。

製品セグメントや地域に拘らず、成長のカギはイノベーションである。

「製品イノベーター」(革新的製品を供給するサプライヤー)は「プロセス型」(プロセス改善に注力するサプライヤー)を利益率で約2%上回る。ただし、プロセス型にも、製品イノベーターと比肩する利益率を実現する企業もみられる。

成長分野投資のポートフォリオ管理が重要

激しい変化と脆弱性に直面する今日の事業環境下で成功を収めるには、部品メーカーは開発力や事業運営における柔軟性、俊敏性をより高める必要がある。「従来の事業で有機的な成長を目指すだけでは不十分である。市場の利益分配はテクノロジー分野に移行しつつあり、部品メーカーは新参プレイヤーとの激しい競争に直面するだろう」と、ゾンダーマン氏は指摘する。

自動車部品メーカーは、コア・コンピタンスの再定義、新技術への適応、そして、成長市場における投資ポートフォリオ構築により積極的に取り組むであろう。 ここでも、魅力的な買収候補の獲得競争や買収金額の高騰により、買収主導の成長戦略にも大きな複雑性が残る。 次世代自動車の在り方、シナリオ・プランニング、そして革新的な製品開発アプローチを事前に検証することは、今後の備えとして非常に重要となる。

* LAZARD 世界展開を行う投資銀行。 同社ドイツ法人との共同調査であり、自動車部品サプライヤー600社以上の業績を分析し、業界の現状、トレンド、課題を評価。